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2018/12/5

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英国は自由の前に規律を教える。上流階級の子弟が行くパブリックスクールではスポーツ、特にラグビーのような団体競技を課す。オックスブリッジ(オックスフォード大、ケンブリッジ大)では自由を謳歌できるが、その前のパブリックスクールでは規律を教える。これはすごいと思ってラグビーを始めた。

進藤孝生氏

ラグビーにはいろんなことわざがある。一番好きなのは「Honor is equal」(名誉は平等)。トライした人だけでなく、パスした人、重圧に耐えた人、タックルで敵を倒した人が受けるオナーは平等ということ。フェアプレー精神にも通じる。

高橋 我々が公式の旅行業者として参加したきっかけは前回のW杯。日本が南アフリカに勝った瞬間、英国人はもとより南アのファンまで「コングラッチュレーション、ジャパン」と称賛してくれた。ラグビーのノーサイドの精神を目の当たりにし、この感動を日本の皆さんと共有したいと意を強くした。

水原 私もその会場にいたが南ア、イングランドの人が大好きになった。

カーワン 南アのファンには悲しい瞬間だったはずだが、みんなで日本の勝利を喜んだ。試合後は互いに乾杯してビールをかわす。ラグビーにはそういう価値観がある。

観客のスマホでルール説明しては

ジョン・カーワン氏

水原 日本大会への期待を聞かせてください。

玉塚 最近、ラグビーをアメリカンフットボールと比べて考えている。似ていると思われがちだが、根本的に違う。アメフトは超アメリカ的。最高経営責任者(CEO)役の監督がいて、選手はその指示に従って、タックルする人は永遠にタックルする。役割が決まっている。

ラグビーはマルチプレーヤーじゃないといけない。情勢が数秒で変わるし、攻守も変わる。どっちがいい悪いじゃないが、ラグビー的な組織が今の世の中には求められている。W杯でラグビーとはそういうものだと広まればいい。

上原 前回のW杯の後、国内の観客数は伸び悩んでいる。理由の一つはルールが難しいこと。反則もどうしてそうなのか分からない。最近、試合会場の大型画面では案内されるが、例えばスマートフォンでぱっと分かるようにしたらいい。反省を込めてだが、今はサプライサイド、つまり選手が楽しんでいるラグビーだ。見ている側は分からない。若い女性が会場で見て分かりやすいような親切が必要じゃないか。

高橋広行氏

来年はラグビーが日本に伝わって120年。もっとファンが増えてほしい。日本がラグビーを短期間で受け入れたのは、全体への貢献が報われるという美的感覚が昔からあったからだと思う。それを表現するラグビーへの支援はぜひ続けたい。

進藤 日本代表に記憶に残るいい試合をしてもらいたい。W杯を機に、ソフトの面ではラグビーのスピリットを日本に残してもらいたい。ハード面では、釜石に鵜住居復興スタジアムができた。8月にこけら落としをしたが、素晴らしいグラウンド。東日本大震災時に「釜石の奇跡」という、子どもが手に手を取って山に逃げたというレガシーのある場所でもある。その後も色々な大会をやってラグビーの聖地の一つにしたい。

試合前後に食事や交流楽しんで

水原 W杯はスポーツツーリズムが変わるきっかけにもなるか。

高橋 今回始めた「ホスピタリティープログラム」は試合前などに飲食を楽しんでもらう観戦スタイル。欧米ではラグビー、サッカー、テニス、ゴルフで定着している。

日本でも、試合の少し前に会場に行ってすぐ帰る観戦スタイルから、数時間前に来てほかのエンターテインメントや食事を楽しみ、終わった後も余裕を持って人と交流する文化を育てられたらと思う。スポーツの感動を共有すると顧客との親密性が高まるので、ビジネスでも効果がある。

カーワン ラグビーは他のスポーツと違う価値観がベースにある。チームワークもそうだし、コンタクトプレーが(互いの痛みを共有させることで)ラグビー選手を正直にしている部分もある。

(自身がニュージーランド代表で出場した1987年の)第1回大会の観客は1万4000人くらいだった。年々、世界中で見る人が増えている。W杯を見に来る世界中の人に、チームワークや正直さという価値を伝えることが大事になる。

=敬称略

[日本経済新聞朝刊2018年11月20日付を再構成]