女性特有の体の不調「おっぱい体操」で改善
日経ヘルス
姿勢が悪いとバストに向かう血流やリンパの流れが滞る。すると、背中がこわばり、肩こりや体のむくみ、冷え、重い月経痛の原因に。乳房をほぐすことでこれらの不調を改善に導くのが「おっぱい体操」だ。
もともとは助産師の神藤多喜子さんが、授乳期に胸が張る、母乳の出が悪いなど、産後の母乳トラブルを解消するために考案したエクササイズだが、女性全般に効果がある。「脳の視床下部に働きかけて、女性ホルモンのエストロゲンの分泌のバランスを整え、子宮や卵巣まで状態がよくなるようだ」と神藤さんは語る。
やり方を右の図に示した。直接乳房に働きかける前に、まずは腕のストレッチ。腕まわりの筋肉はバストを支える土台になっており、ここをほぐすことで血流やリンパの流れが改善しやすくなるからだ。
まず、両腕を水平に伸ばし、手のひらを下に向けたま指先に向かうイメージで伸ばす。次に、両腕全体をひねりながら頭上に持ち上げていき、一番上まで行ったら手を目いっぱい伸ばす。頭の後ろで右手で左のひじをつかみ、鼻から息を吐きながら、上半身を右へゆっくり倒して、左脇を伸ばす。4~5回繰り返し、反対側も同様に。これだけでも凝りには効果的だ。
注意するポイントは、伸ばす、ひねるなどの動きを最大限に行うこと。また、筋を痛めないように、反動をつけずにじっくりじわじわと伸ばすこと。「女性はおっぱいがあるので四十肩の痛みや、腕が上がらないという症状が激しくなる。腕のストレッチはその予防にもなる」と神藤さん。
次に「おっぱいはずし」。指先を熊手のような形にして、指の腹部分を使い、少し痛いが気持ちいいくらいの強さで、下着から背中にはみ出ている部分から寄せ集めるようにマッサージする。右手を使って左の乳房からかき寄せた後、右の乳房も同様に行う。
現代女性は姿勢が悪いうえに下着で胸を締め付けているので「おっぱいが胸の筋肉に張りついている状態」と神藤さんは言う。胸の筋肉から乳房をひき離す(はずす)ようなイメージの体操で、血液やリンパの流れがよくなると、凝りなどの不調が解消し、ホルモンバランスが整う。
最後に、乳房を斜めに上げてその位置で揺らす「おっぱいゆらし」。右手で左の乳房を持ち上げ、その位置から鎖骨の中央に向けて斜め上に弾ませるように揺らす。1秒間に3回程度のリズムで10秒間続ける。右側も同様。今度は、両手でそれぞれの乳房を持ち上げ、その位置から真上に向けて軽く揺らす。リズムは1秒間に3回程度で、10秒間程度続ける。
気を付けたいのは、自然な高さで揺らすのではなく、持ち上げた位置を基点にすること。胸を支えているクーパー靭帯というコラーゲン繊維組織の束が切れるのを防げる。バストが垂れるのを避けられるほか、靭帯の弾力が向上して張りがよくなり、バストアップにもつながる。
男性にも効果
「ストレッチ」と「おっぱいはずし」「おっぱいゆらし」はセットで行いたい。朝、晩1セットずつを目標に。入浴時に湯船の中で行うと、浮力の効果で楽に行えるうえ、体が温まっているのでさらに血流がアップする。昼間も、トイレへ行くたびなどにこまめに軽く揺らすのも効果的だ。
実は、男性にも効果が期待できる方法がある。「胸腺マッサージ」は、両手の甲を合わせて、バストの間のみぞおち部分を上下に10回程度さするというもの。胸腺は鎖骨の下、胸の中央にあるホルモン分泌器官で、免疫中枢でもある。ここを刺激すると、リンパの流れがさらに良くなるうえに、免疫力もアップする。胸が開いて姿勢が正しくなり、呼吸が楽になる効果も。男性が行うと男性ホルモンのバランスが整うという。
いずれも服の上から行ってもよく、いつでも手軽に実践できる動きなので日々の習慣に取り入れたい。
産後のぽっこり下腹に悩む女性は多い。特定非営利活動法人(NPO法人)マドレボニータ(東京都杉並区)代表で、多くの妊婦や経産婦にエクササイズを指導する吉岡マコさんは「ケアをすべきは腹直筋。なぜならば、産後は腹直筋の働きが悪くなる人が多いからだ」と言う。
腹直筋を鍛える運動といえば、あおむけから起き上がる腹筋運動を想像する人が多いが、「産後だと腰を痛めることもある」と吉岡さん。
お薦めの方法が「後ろ45度腹筋」。床の上で脚を伸ばして座り、両ひざを曲げて後ろ45度に倒れてその姿勢をキープ、ゆっくり体を起こすと、無理せず鍛えられる。
(日経ヘルス編集部)
[日経プラスワン2012年1月14日掲載]
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