梨元勝さんが名誉毀損を免れた判決理由

須藤「あの梨(梨元勝)さんが名誉毀損で裁判やられたことだってあるというのに」

「恐縮です」「スイマセン」「ごめんなさい」と満面の笑み。今で言う「神対応」で取材する梨元さんですら訴えられたことがあるのに、自分はゼロだと、須藤さんは自慢げに語るのだ。

須藤「実際には新聞に掲載された梨さんのコメントが訴えの対象になったんだけど。まあ、結果は梨さんの勝ち。その時、裁判官がしゃれたことをいったんだよね。『A紙(某有名スポーツ紙)の載せた記事をそのまま鵜呑みにする読者がいるとは思えない』。いい話でしょう?」

何だかよく分からないが、ぶしつけに聞こえるかもしれない自分の物言いは、実は慎重に語彙を選択をしているから、過去に一度も舌禍を起こしていないと、須藤さんは強調するのだ。

須藤「たとえば最近の例でいえばね。区議会の場面で区長から明確な答弁がなかったから、いつもの調子で切り込んだわけ。『何だ区長! 間が抜けてるぞ』って。そしたら議場が騒然として、ある女性議員が「議長ー、議長ー! 今、須藤議員が区長は、まぬけだぞと言いました。まぬけは侮蔑的な言い方です。問題とすべきです」っていうのさ。僕はそういうときはしっかり用心して言葉を選んでるから、録音でも、議事録でも確認してもらったら全然問題ないわけ」

梶原「結果は?」

須藤「処分などの問題には、もちろんならず。だって実際『区長はまぬけだ』とは一言も言っていないんだもの。実際に言ったのは『区長、間が抜けてるぞ』。『まぬけ』は侮辱に当たるおそれがあるかもしれないけど、『間が抜けてる』はそういう意味じゃないって、辞書でチェックすればすぐ分かる」

たった1文字で変わる意味

そう言われ、すかさず、スマートフォンに入れた辞書アプリで検索した私は「なーるほど」と感心してしまった。そこには両者のニュアンスの違いが明確に示されていたからだ。

「間が抜ける」の説明は「時や場合にあわず変な感じがする、あるべきものがなくて、変な感じがする」。そのニュアンスはあくまでも「変な感じ」にすぎない。

一方で「間抜け」は「することに抜かりのあるひと、とんま。例:間抜け野郎」とある。「間が抜ける」は「間抜け」に比べると、だいぶ「穏やかな表現」だと言えなくもない。

「芸能リポーターの黄金時代」が終わってすでに20年余りの歳月が流れるが、須藤甚一郎さんが芸能リポーター時代に築いた技はまだ生き続けているようだ。

※「梶原しげるの「しゃべりテク」」は毎月第2、4木曜更新です。次回は2018年12月13日の予定です。

梶原しげる
 1950年生まれ。早稲田大学卒業後、文化放送のアナウンサーに。92年からフリー。司会業を中心に活躍中。東京成徳大学客員教授(心理学修士)。「日本語検定」審議委員。著書に「すべらない敬語」「まずは『ドジな話』をしなさい」など。