産業構造を激変させる第5世代移動通信システム「5G」が2019年にも登場する。すでに大手キャリアが陣取り合戦を繰り広げているのが、革新的なサービスの創出だ。従来のスマホを中心としたBtoCビジネスから、BtoBtoXのサービス“共創”へと軸足の移行が求められている。特集の第1回ではソフトバンクの戦略を探った。

4~12月期として連結純利益が初めて1兆円を超えた2018年2月の決算発表で、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は「5Gをリードする」との決意を示した(Rodrigo Reyes Marin/アフロ)
4~12月期として連結純利益が初めて1兆円を超えた2018年2月の決算発表で、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は「5Gをリードする」との決意を示した(Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 ヒトの1世代は30年とされる。それに比べてテクノロジーの進化は驚くほど早い。そもそも携帯電話が誕生したのは、30年余り前。ヒトが生まれて親になるほどの間に、モバイル通信の規格は、第4世代(4G、Gとはジェネレーションの略)まで達している。

 00年代に広がったのは3G(第3世代)だった。デジタル化が進み、携帯端末でネットにつなぐのが当たり前になった。まだガラケーの全盛期である。4Gになって通信速度が劇的に上がり、スマートフォンが普及。動画配信が急速に広がった。4Gは次世代高速通信の代表格とされ、一つの到達点を迎えたが、その4Gのスペックをはるかにしのぐのが5Gである。

データ通信からIoTの時代へ

 10Gbpsを超える「高速・大容量」に加え、通信の遅れは1000分の1秒と限りなくリアルタイムに近い「低遅延」、それが1㎢当たり100万台以上の端末に「多接続」できるようになる。

 「3Gが電話回線の時代とすれば、4Gはデータ通信の時代。5Gとはサービスをデリバーするネットワーク。あらゆるモノがネットにつながるIoTそのものだ」とソフトバンクの湧川隆次先端技術開発本部長は考える。

 例えば、高速・大容量、低遅延、多接続という5Gの特徴をすべて生かせる大本命とされているのは自動運転技術だろう。また、大都市と地方の診療所などを結んだ遠隔医療も期待される。高精細な画像伝送が広がれば顔認識の精度が格段に高まり、迷子がなくなるかもしれない。つまり、アイデア次第で、この世のあらゆるモノにイノベーションを起こし得るインフラが5Gなのだ。

 スマホがビジネスの主役でなくなる時代、「キャリアのビジネスモデルはBtoCから『BtoBtoX』に変わる」(湧川氏)。通信キャリアは消費者(C)にスマホを売るベンダーではなく、5Gというインフラを使って他社(B)と共にサービスを作り上げる存在になる。この“共創する”という考えを形にした施設をソフトバンクは東京・台場に用意した。

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