ライフコラム

立川談笑、らくご「虎の穴」

テレビとスマホ、落語はどっちが笑える? 立川吉笑

2018/11/11

写真はイメージ=PIXTA

テレビ番組に「超入門!落語 THE MOVIE」(NHK)というのがある。ざっくり紹介すると、落語家の語りに合わせて、役者が当て振り、というか「口パク」のような感じでお芝居する。画面には落語の登場人物を演じる俳優たちや情景が映るが、音は落語家の声のみ。映像に合わせて音声を入れるアニメの逆といえば、わかりやすいかもしれない。今回はこのユニークな番組を取り上げながら、落語の映像化について考えてみたい。

映像に入る前に、落語家と落語を演じる俳優の違いに触れておきたい。俳優が落語家役をつとめるドラマもあるし、近ごろは俳優や声優が「落語会」を開いて披露するケースも増えている。

この両者、「落語家による落語」と「役者による落語」では何が変わるかというと、テンポ、つまりは「間」だ。単純に述べれば、落語家の方がテンポが早い。俳優の落語を見て、最も違和感を感じるのはこのテンポ。想像するに、相手の台詞(せりふ)を聞き、受け止めた上で、自分の台詞を発することを徹底的に訓練されているから、そうなるのだろうと思う。

ところが落語家は必ずしもそんな会話の組み立てをしない。もちろん、ある登場人物の言葉を受け止めてから別の登場人物に喋らせることも多々あるけど、そこまで言葉尻を粒立てずにパーパー流れるように会話を進行させることが少なくない。上手い人の語り口は、会話のキャッチボールというよりも流れる歌のように進む。片方のセリフを言い終える前に、首を反対方向へ切って相槌(あいづち)を打つことさえある。一人で全ての役をこなすから無理なく表現できるのかもしれない。

そこで「落語 THE MOVIE」。この番組は通常の芝居とは違い、落語家本人の間の取り方が、そのまま生かされているのが特徴だ。これを落語家や落語ファンがどう見ているのかについては、人それぞれとしか言いようがないが、少なからず聞こえてくる定番の感想に「あんなのは落語じゃない」「役者の演技は不要で、高座だけを放送すればいいのに」というのがある。この種の意見は、放送中にSNS(交流サイト)でリアルタイム検索をすればじゃんじゃん出てくる。

伝統芸能としての一面を持つ落語には、当たり前だけど伝統性がある。型やルールと言い換えてもいい。江戸時代から脈々と続いてきた落語には古参のファンがいる。膨大な知識を持ったファンや保守本流のファン。自分にとっての落語像が明確にあって、それ以外は邪道と線引きするファン。そういった方からすると、自分が愛している古き良き落語像こそが落語で、その枠からはみ出たものは全て良くないもの、むしろ敵、みたいになってしまいがちだ。

僕はというと、この番組は「よくできたシステムだなぁ」と好意的にみている。

DVDよりCDが面白いワケ

数年前から僕はあることについて考えてきた。それは「落語はDVDで見るよりも、CDで聴いた方が面白く感じるのはなぜだろう?」ということ。ネタによって微妙に変わるとはいえ、基本的に落語はDVDで見るよりも、CDで聴く方が楽しみやすい。生で見るのが一番楽しいのは当然として、なぜDVDよりもCDの方が良く感じるのだろうかと、不思議でしようがなかった。

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