「恋」は男女ではくくれない 最新辞書、変わる解釈

「妙齢」の定義に見えた、辞書ごとの違い

最新の国語辞典の特徴を語るにあたって、「性」に特化したままで終わるのも何となく気が引けるので、最後に「これは、新しい!」と感心した例を記しておく。

「妙齢」といえば、読者はどの年代を思い描くだろうか? 「現代新国語辞典」のユニークさを知っていただく前に他の辞書の語釈をいくつかアトランダムに見ていただこう。

「広辞苑」:女性のうら若い年頃

「日本国語大辞典」(小学館):(妙は若いの意)若い年頃、特に女性

この「特に女性」という記述に引っ掛かった人がいるかもしれないから、別の例も紹介しておく。

「新明解国語辞典」(第7版、三省堂):(壮年以上の人や男性から見た)女性の結婚適齢期の称(古くは、男性にも言った)

「古くは、男性にも」とは新鮮な情報だが、「結婚適齢期の称」というあたりに引っ掛かりを感じる人もいそうだ。国語辞典の語釈は多様だからこそ興味深い。

「大辞泉」(小学館):「妙」は若い意、若い年ごろ、例:妙齢の美人

「三省堂国語辞典」(第7版):若くて美しい年ごろ。としごろ

「三省堂国語辞典」(通称・さんこく)は「若い」にプラスして「美しい年ごろ」を加えているのが目をひく。

「明鏡国語辞典」(第2版、大修館書店):若い年頃。特に、女性の若い年ごろ

きりがないからここまでにする。

さあ、では本日のテーマ「大学受験を目指す高校生向けの国語辞典」ともいわれる「三省堂 現代新国語辞典 第6版」ではどうなっているのか。

妙齢:(1)若くて美しい年ごろ

ここまでは他の国語辞典と変わらない。ところが、次が違った。

(2)年齢相応の魅力をたたえていること。例「五十歳ぐらいの妙齢の女性が私を出迎えた」 (2)は、近年の用法

ここだけ読んでも、辞書好きのいい年をしたおっさんたちに「現代新国語辞典」のファンが多い理由を理解していただけるかもしれない。

50歳の女性を「妙齢」と言ったら、即「誤用だ!」と言われかねない空気のなか、勇気を持って「中高年といわれる女性の中にも、妙齢と呼ぶにふさわしい女性が出現し始めているのだ」と記述するセンスと気合を私は大いに評価する。

※「梶原しげるの「しゃべりテク」」は毎月第2、4木曜更新です。次回は2018年11月22日の予定です。

梶原しげる
1950年生まれ。早稲田大学卒業後、文化放送のアナウンサーに。92年からフリー。司会業を中心に活躍中。東京成徳大学客員教授(心理学修士)。「日本語検定」審議委員。著書に「すべらない敬語」「まずは『ドジな話』をしなさい」など。