資格試験も賭け事も 傷を深くしない引き際の見つけ方第2回 サンクコストの罠

人間は必ずしも合理的に考えて物事を進めているわけではありません。情緒的な判断や思考の癖が私たちの意思決定を誤らせる要因になります。その一つがサンクコストなわけです。

過去を脇において現在だけで判断する

私たちの判断をゆがめるサンクコストの罠は、あちこちで口を広げて待ち構えています。仕事でもプライベートでも、「ここまでやって今さらやめられるか」「何のために頑張ってきたんだ」と思ったら、罠にはまっていないか、冷静になって考えてみることをお勧めします。

冒頭の事例でいえば、過去の努力はいったん脇に置いて、「中小企業診断士の資格を取れば、どんな便益が生まれるのか」を今一度問い直すべきでしょう。

経営コンサルタントになりたければ、コンサルティング会社に転職するのが近道です。独立開業するにしても、資格を取るよりは、経営の指南書を一冊上梓(じょうし)するほうが、客集めに効果があります。単に経営の知識を高めて仕事に役立てたいのなら、MBA(経営学修士)という選択肢もあります。

合格の見込みも考慮しなければなりません。仮に、合格率が20%だからといって、5回受ければ必ず通るわけではありません。過去はどうあれ、今年の合格の見込みを、希望的観測を除いて冷静に予測しなければなりません。

この二つから合格の期待値を見積り、今年投下する予定の時間とお金に見合うかどうかを判断するのが、望ましい意思決定のやり方です。その結果、断念したとしても、過去の努力が無駄になるわけではなく、それはそれで賢明な判断だと言えます。

ということで、サンクコストの話を出しながら、あえて厳しいことを言うのも、友人の務めの一つではないでしょうか。実際にはなかなか言えませんけどね……。

堀公俊
日本ファシリテーション協会フェロー。大阪大学大学院工学研究科修了。大手精密機器メーカーで商品開発や経営企画に従事。1995年からファシリテーション活動を展開。2003年に日本ファシリテーション協会を設立、研究会や講演活動を通じて普及・啓発に努める。著書に「ファシリテーション入門第2版」「会議を変えるワンフレーズ」など。

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