資格試験も賭け事も 傷を深くしない引き際の見つけ方第2回 サンクコストの罠

何度チャレンジしても合格しない

キャリアアップを目指して資格の取得を目指す人がいます。なかでも、中小企業診断士は人気の資格です。国家資格だけに、弁護士ほどではありませんが、狭き門であることに変わりありません。

私の知人に、独力で勉強するものの、なかなか受からない人がいます。今年も落ちたのに、「せっかくここまで頑張ったのだから」と、仕事の合間を縫って勉強を続けています。そんな彼にどんなアドバイスをしてあげるとよいでしょうか。

何年も仕事と勉強の両立を続ける努力と熱意には頭が下がります。ここで諦めたのでは、今までの努力が水泡に帰してしまいます。最後の踏ん張りどころにきているのかもしれず、「頑張れ!」「今度はいけるぞ!」と励ましの言葉をかけるのが、友人としては望ましいのかもしれません。

ところが、時間や労力といった、今までかけてきたコストは、もはや戻ってきません。試験に落ちた段階で回収不能となっています。今さら悔やんでも、もう終わってしまった話です。

にもかかわらず、「ここでやめては元も子もない」とばかり、それらも勘定に含めて今の行動を決めるのは賢明ではありません。彼が考えるべきは、今年投入するコストと得られるリターンが見合うかどうかです。合理的に考えればそうにしかなりません。

それが見合うのなら今年もチャレンジすればよく、見合わないなら違うことにコストを投下する方が得策です。もっと簡単な資格を狙ったり、転職など資格以外の方法でキャリアアップを目指したり……。少し頭を冷やしてあげるほうが、本人のためになるかもしれません。

「もったいない」があだになる

いま一つピンときていない方のために、もうひとつ分かりやすい例を挙げましょう。

たとえば、このコラムに興味を持った方が、私の著書「ファシリテーション入門」(日経文庫)を購入したとしましょう。投入したコストは約1000円になります。

ところが、5分ほど読み進めたものの、自分が期待していた内容とは違っていました。その段階で読書をやめれば、これ以上の損失は発生しません。1000円も5分間ももう返ってこないのですから(古本屋に売るのはやめてくださいね)。

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