ライフコラム

梶原しげるの「しゃべりテク」

「コメントを一言」の薄っぺらさ 問われる取材者の志

2018/10/25

日本相撲協会に退職届を提出し記者会見した貴乃花親方(当時)

元「モーニング娘。」メンバーの吉沢ひとみ被告が保釈保証金を払って、警視庁原宿署を出てきたときのことだ。ものすごい数のカメラと記者が遠巻きにするなか、神妙な表情で短く謝罪の言葉を述べ、待機した車に滑り込むまでの間、彼女に向けて記者・レポーターからこんな声が繰り返し投げかけられた。

「吉沢さーん、一言おねがいしまーす」

「一言、一言、お願いします」

「すいません、一言!」

真実を聞かせてほしいと思うなら、それなりの言葉をぶつけたっていいじゃないかとも思った。

一昔前なら、記者やレポーターが「被害者に直接謝罪したんですか?」「会見しないんですか?」「逃げるんですか?」程度には、バリエーションをつけて質問を投げかけていたものだが、最近は何でもかんでも「一言、下さい」という「あいまいな問いかけ」が主流となっているようだ。

■「一言」の裏に潜む安直さ

そういえば、彼女とは別の話だが、有名女優の息子が問題を起こしたケースでも、警察署から彼が姿を現したとき、いの一番に私の耳に届いたのは「○○さーん、一言、お願いしまーす」だったのを思い出した。

「一言、お願いしまーす」という呼びかけには「事件の真相に迫る一言を暴き出したい」というより「とりあえず声を掛けて、おいしい返答があったら記事にするか」程度の「安直さ」を感じる。「何について一言を求めているか」を明示しないで「一言、お願いしまーす」と言われても、相手は答えようがないではないか(答えたくもないだろうが)。

弟子の不始末で囲み取材を受けた貴乃花親方(当時)はマイクを直接向ける取材陣が問いかける具体的な質問に一つずつ「事実です」「確認しました」「深刻です」「きっちり対処します」と明確に答えていた。聞くべきことは聞いた、話すべきは話したと、双方が納得し、親方がその場を離れようと、2、3歩足を踏み出したところで、それまで遠巻きにしていた人の中から、やはり「あの声」が掛かった。

「すいませーん、一言、お願いできますか?」

一言どころか、すでに尋ねられたことに、親方は5つも6つも答えていたのだから、それで不足な点に絞って聞けばよいのに、マニュアルっぽく、とりあえずの「一言、お願いします」ってどうなんだろう?

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