深谷 レンガ駅舎、東京に負けぬ10hours pleasure

昔ながらの街並み、近隣の人々が憩う緑地、しゃれた雑貨店、知る人ぞ知るレストランや和菓子店……。遠くに出かけなくても、身近なところに思わぬ発見があるもの。わずか10時間もあれば十分、ちょっと時間ができた時にあなたも出かけてみませんか。「THE NIKKEI MAGAZINE(日経マガジン)」(毎月第3日曜日発行、東京、神奈川、千葉、埼玉の宅配限定)で好評連載中の「10hours pleasure」で訪ねた東京都内や近郊の街を紹介します。

鍋ものの人気者、深谷ネギ。産地である埼玉県深谷市は、都心から高崎線で、のどかな風景の中を約1時間半ほど走ったところにある。深谷駅で降りて駅舎の迫力に驚く。レンガの外観が立派な建物だ。ミニ東京駅といった雰囲気がある。

駅前の「青淵広場」には、深谷市で生まれた 渋沢栄一の像があった。「青淵(せいえん)」とは彼の号。渋沢の生家に水がわき出る淵(ふち)があったことにちなんで付けられた。深谷市の郊外には今も彼の生家が残る。

深谷はかつて中山道の宿場町「深谷宿」として栄えた。中山道では最大級の宿場だったらしい。だが旧中山道沿いの商店街は、シャッターを閉じたままの店も少なくない。

旧中山道を歩いていると「菊泉」と書かれたレンガの煙突が目に入る。

滝沢酒造は文久3年(1863年)創業。明治33年(1900年)に深谷へ移ってきた。「深谷は水がいいから、おいしい酒が造れる」と滝沢英之専務(40)。煙突は、石炭で米をふかしていた昭和30年代まで使っていた。酒蔵を見せてもらうと、ほとんど機械が見あたらない。あえて古い手法を続けているそうだ。「機械化したほうが楽だけど」と滝沢さんは笑う。

深谷のレンガが東京駅に使われたことから、1996年、東京駅をモチーフに作られたJR深谷駅
高くそびえる煙突は深谷市のランドマークでもある(左)。昔の雰囲気を残す滝沢酒造の売り場

旧中山道沿いにあるタケイ菓子店。人気の酒まんじゅうはあんこから店で作る

中山道沿いには今も3本のレンガ煙突が残る。そのうちの1本、かつて七ツ梅酒造があった場所には、現在「深谷シネマ」が建つ。酒蔵を改装して映画館にしたのは2010年4月。その前は古い銀行の建物を利用していた。使われなくなった施設を再利用するのは「映画館が商店街復活のきっかけになってくれれば、という思いがあるから」と竹石研二館長(63)。

実際、映画館のよい影響は周囲に現れている。タケイ菓子店の武井忠則さん(79)によれば「映画を見た帰りに、立ち寄る人が増えた」。午後に立ち寄ったら人気の酒まんじゅうは売り切れていた。

深谷シネマの隣に鬼瓦工房「鬼義」があった。「深谷は江戸時代から瓦の街として栄えた」と塚越久義さん(32)は話す。ただ同じ瓦でも、鬼瓦と瓦は別々の業者が作ったそうだ。

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