問題解決7つのアプローチ どれを使うのが正解か第8回 7つのアプローチを使い分ける

技術的な問題を適応的なアプローチで解決しようとすると効率が悪くなります。逆に、適応的な問題に技術的なアプローチを用いてもうまくいきません。まずは、現在抱えている問題がどちらのタイプなのかを見極め、その上で問題にふさわしいアプローチを探すようにしましょう。

問題解決の将来トレンドを読み解く

7つのアプローチは、経営学、社会学、心理学、教育学、哲学といった垣根を越え、あらゆる分野の問題解決技法を整理するところから見つけたものです。いわば、問題と闘ってきた人類の知恵が凝縮されています。

一方、整理することで問題解決技法のこれからの発展の可能性も見えてきました。最後にそのお話をして本連載を締めくくります。

1つ目は、「技術的な問題」から「適応的な問題」への関心のシフトです。前者向けの「ロジカルに考えて最も効率良く結果を出す」という技法は、ここしばらく目新しいものが出ていません。必要性がなくなったのではなく、新たに開発する必要がないのだと思います。今後出てくるとしたら、間違いなく後者に対するもの。それを生むヒントになるのが、宗教的、東洋的、霊的(スピリチュアル)な考え方にあるのではないかとにらんでいます。

2つ目に、単独の手法で解決を図るのではなく、それらをうまく組み合わせて活用するのが今後のトレンドになることです。典型的なのが、デザイン思考、ホールシステム・アプローチ、フューチャーセンターなどの取り組みです。セラピーの世界でも、東洋的な禅と西洋的な心理療法を組み合わせたマインドフルネス認知行動療法が注目を浴びています。今後出てくるものも、組み合わせの妙をうまく生かしたものではないかと想像します。

古い酒を新しい革袋に盛ってみよう!

そして3つ目に、問題解決の根本原理においては驚くほどの進歩はなく、それをどうクールに見せるかがポイントであることです。新しい酒ではなく、古い酒を新しい革袋に盛っているわけです。

たとえば、ポジティブ・アプローチの基本の考え方になっている、「原因ではなく目的を考えよ」というのは誰が言い出しっぺかご存じですか。「人間のあらゆる営みには目的がある」と考え、そこから哲学を組み立てたギリシャの思想家アリストテレスです。

では、対立解消アプローチや認知転換アプローチで使う、「メンタルモデルが問題をつくりだしている」という考え方の始祖は誰でしょうか。今度は東洋の人です。

「煩悩(執着)が問題をつくりだしている」と悟ったお釈迦様ですね。般若心経の「色即是空」の考え方はメンタルモデルそのものです。いずれも、今から2500年ほど前の話です。装いだけを変えながら、ありがたい教えを大切に使い続けているわけです。

逆に言えば、古い哲学や宗教の中に、現代の問題解決のヒントがまだまだ隠されているはず(そもそも宗教は「生老病死」といった解けない問題を解くための便法?)。まさに「温故知新」です。

そう考えていくと、時々「論語」「兵法」といった古典がブームになるのも分かる気がします。問題に悩んでいるときは古典を読むというのは、とても合理的な方法なのかもしれません。

問題解決のツールやフレームワークに溺れることなく、原理をしっかりと身につけること。それこそが、複雑な問題を抱えて四苦八苦している現代人に求められているのだと思います。

(「日経Bizアカデミー」の記事を一部再構成)

堀公俊
日本ファシリテーション協会フェロー。大阪大学大学院工学研究科修了。大手精密機器メーカーで商品開発や経営企画に従事。1995年からファシリテーション活動を展開。2003年に日本ファシリテーション協会を設立し、研究会や講演活動を通じて普及・啓発に努める。著書に「問題解決フレームワーク大全」「会議を変えるワンフレーズ」など。

堀 公俊氏・組織コンサルタントが講師を務めるスキルアップ講座/日経ビジネススクール

組織変革、業務改善に欠かせないワークショップの成果を引き出すファシリテーション能力、問題解決のフレームワーク思考力を高める

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