3000人の避難所に2000人分の食料 配るべきか否か
第5回 対立解消アプローチ
被災者への食料配給問題は阪神大震災でも課題になった。画像はイメージ=PIXTA
人生はまさにクロスロード!
「あなたは避難所の食糧担当。被災から数時間。避難所には3000人が避難しているとの確かな情報が得られた。現時点で確保できた食糧は2000食。以降の見通しは、今のところなし。まず2000食を配る?」(矢守克也ほか「防災ゲームで学ぶリスク・コミュニケーション」ナカニシヤ出版)
阪神大震災の経験を後世に伝えるためにつくられたゲーム「クロスロード」からの一問です。皆さんなら、こんなときにどのように判断しますか?
早く配らないと体力が消耗する一方。腹が減ると気も荒くなってきます。ところが、早々に配ってしまって、次が来なかったら困ります。かえって配ったことがあだになります。
だったら、けが人やお年寄りといった弱者にだけ配りましょうか。これなら納得しない人はいないはず。でも、それを誰がどうやって判別しますか?
パンのように分けられるものなら、3000人に平等に行き渡るようにするという手があります。それにしても、どうやって配りますか。人数が多いので取りに来てもらいましょうか。
その場合、「家族の分をまとめて取りに来ました」「おじいちゃんが歩けないのでその分を下さい」と言われたら渡しますか。不足や配り忘れが出ると、それこそ大変なことになります。
そう考えていくと、いっそのこと知らんぷりをしているほうが手間やトラブルも省け、責任をかぶらなくてすみます。でも、配らなかったことで不測の事態が起こったら、逆に「なぜ、あるのに配らなかったんだ!」と責任追及をされてしまいます。考えれば考えるほど難しい問題です。
問題とはジレンマに他ならない
私たちは、常にこういったジレンマを抱えて生きています。
それは「やりたくても、できない」といったように自分の中にもありますが、「上司は○○しろというが、自分は△△したい」のように対人関係の中にもあります。それが大きくなったのが、組織や社会が抱えているさまざまな対立や紛争です。