本当に老後を楽しめるか 「遊びの予習」で下準備を

シニア旅行に見る「不慣れ感」

佐藤「おそれながら、私はパック旅行評論家(著作多し)として、欧米はもとより中東、アフリカ、南米など、いろいろパックツアーで出掛けますが、客の多くは若いころの節約の甲斐あってか、『老後の見通しが立った豊かなシニア層』です」

梶原「うらやましいなあ」

佐藤「そうでもないんです」

梶原「なんで?」

佐藤「旅をエンジョイするには、若いころからそれなりに旅を楽しむ体験がないと、旅の、何をどう楽しんでいいのかが分からない」

梶原「旅を楽しむのに経験と学習が必要?」

佐藤「その通り。梶原さんも私も、若いころ、散々貧乏旅行したじゃないですか。それで、旅って、いわゆる観光スポットそのものより、そこに到着するまでの道中の景色とか、現地の怪しい人とのやり取りとか、そういうのを丸ごと楽しんで、その失敗談や面白話を帰国後、仲間たちに語って、笑ってもらう。こういう全体をひっくるめて旅の楽しみですよね」

梶原「非日常的な旅には刺激がいっぱい。語りたくなるよねえ」

佐藤「ところが、若いころ、旅を楽しむチャンスがなかった人が『経済的に余裕ができたから、旅へでも出かけるか?』って参加すると、なかなか旅を満喫できない」

■観光名所での「第一目的」

梶原「たとえば?」

佐藤「フランスの観光名所、モンサンミッシェルへのツアーのときも、私以外は60歳代から70歳代のご夫婦でした。ホテルからバスで現地に向かいます。僕なんかは、目的地までの窓の外に見える、日本とはまるで違う空の色とか、子供たちの服装とか、市場の喧噪(けんそう)とか、そういうのが面白くてしょうがない。あらかじめどういうコースを進むのか、地図やガイドブックで予習してありますから、『お、これこれ!』と興味津々です。ところが、ほかの皆さんは全員、寝ていらっしゃる」

梶原「体力的にも、若いころのようには行かないからなあ」

佐藤「目的地に到着すると、皆さんお目覚めになって『モンサンなんとかはどれ?』『一番きれいに写真が撮れるのはどこ?』とガイドに尋ね、そこに妻を立たせ、スマートフォン(スマホ)でシャカシャカ。次にガイドや私に夫婦のツーショットを撮ってくれとおっしゃるんです」

梶原「いきなり盛り上がるんですね」

佐藤「こういう皆さんにみられる特徴ですが、エッフェル塔でも凱旋門でも、それらをしみじみ見上げて旅の情緒をかみしめるのではなく、それらを背にして、スマホのレンズに向けて笑顔でピースサインすることに情熱を注がれます」

梶原「もったいないねえ」

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