MBAが醸すクラフトビール 「帰る場所」失い起業

高収入の職種を見切った理由

ところで、山田さんとのインタビューが今回実現したのは、2年ほど前のある夜、たまたま購入したクラフトビールがきっかけだ。当時、中目黒駅(東京都目黒区)前にできたばかりの「蔦屋書店」にふらりと立ち寄り、「なんで本屋さんに?」と不思議に思って手にした「KAGUA」を試しに買って帰宅し、風呂上がりに飲んでみた。その瞬間、しゃれや冗談抜きに「和(わっ)!」と声をあげたのをいまだに思い出す。

インタビューの中で私はしばしば下品で意地悪なことを聞く。

梶原「VCとかIT企業向け経営企画の仕事からケンブリッジでMBA取得というキャリアなら、なにもビール醸造という泥臭い製造業より外資系コンサルあたりで、もっと楽に稼げたんじゃないですか?(下品でしょう?)」

山田「もうけという点ではその通りです。しかし、自分が今、何をやっているか、人に説明するのがこんなに簡単な職業もないと思うんです」

商品に語ってもらえる「自分」

梶原「VCとか、IT向け経営企画って多分、私レベルだと詳しく説明されればされるほどわかんないと確かに思いますね」

山田「僕の場合は『これ、造ってるんです』って、うちのビールをお渡しするんです。そうすると相手は、うちがデザインしたボトルの手触り、栓を抜いたときのにおい、口に含んだときの味わい、全て一瞬で理解してもらえます」

梶原「ほ?!」

山田「山田さんって、今はこれを造ってるんだって」

梶原「確かに」

山田「自分がやっていることを瞬時に伝えられる仕事を選んでよかったと思うんです」

「転職」「転学」を経て探り当てた「天職」をいとおしむように語る山田さんだった。

※「梶原しげるの「しゃべりテク」」は毎月第2、4木曜更新です。次回は2018年10月11日の予定です。

梶原しげる
1950年生まれ。早稲田大学卒業後、文化放送のアナウンサーに。92年からフリー。司会業を中心に活躍中。東京成徳大学客員教授(心理学修士)。「日本語検定」審議委員。著書に「すべらない敬語」「まずは『ドジな話』をしなさい」など。

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