MBAが醸すクラフトビール 「帰る場所」失い起業

日本でのクラフト普及を確信

山田「文明が発展すればするほど、量ばかりガブガブ飲むスタイルから、酒量を抑えて、貴重なビールを少ない量でゆっくり味わって堪能するようになる。近年の健康志向もその後押しをするようになりましたから、日本の状況も変わるでしょうね」

山田さんによれば、英国に限らず、留学中に足を伸ばした欧州各国では多くの店が「ビールは何になさいますか?」と聞いてくるらしい。各店がよりすぐって用意した、いくつもの銘柄のクラフトビールのうちの「どれを」「どんな食事に合わせたいのか」を知りたがるわけだ。客が自分の好みを言うと、それに一番合った個性を持つ、店自慢のクラフトビールを紹介してくれることが珍しくないようだ。

山田「個性の際立った味のクラフトビールを一度知ってしまうと、コモディティー(商品)化されたビールに後戻りできないんですね。人は、自分好みの味を探す喜びを奪われたくないものです。日本も必ずそうなるんだと思います」

MBAを得て帰国すると、山田さんは、転職人生で培ったIT(情報技術)系、VC系の技術を生かした「アルバイト」で起業資金を蓄えながら、クラフトビール人脈を探り、修行するという5年間を過ごした。そして、2011年。山田さんは自宅を本社として「日本クラフトビール」を立ち上げた。

社名に込めた自覚とウイット

その後、会社の規模拡大に伴い、社名をファーイーストブルーイングに変えている。「ファーイースト」とは極東。欧州や米国などの「世界の中心」から東に遠く離れた我が国を表現するとき使われる言葉だ。

山田「命名理由の一つは、ビールの歴史や伝統においても『辺境』であるという自覚を忘れないで努力し続けるため。もう一つは、ビール造りに欠かせない大事な酵母(イースト)にも掛けたしゃれでもあります。欧米人なんかは結構ニヤッと受けてくれたりするんです」

こういう「自覚」と「しゃれっ気」のせいで、というわけではもちろんないが、山田さんのビールは、国内はもちろん、世界20カ国近い国の一流料理店やホテルで「和食にピッタリのクラフトビール」として支持されていると、うれしそうに話してくれた。

私の「クラフトビール好き」は「文明」とか「健康志向」ではなく、単に年齢のせいで、飲む量が減り、以前より少量でより満足のいくお酒をと探していたらクラフトビールに行きついたというだけ。じっくり味わいながら飲むのはせいぜいグラス3杯だから、「ガブ飲み時代」よりむしろ安くあがることのほうが多い。

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