かつお節 1.5倍、味追求で独走狙う 店もきれいに
「名代 富士そば」創業者 丹道夫氏(16)
店をガラス張り、床を大理石にしたことで客層の幅が広がった
立ちそば店「名代 富士そば」を創業した丹道夫(たん・みちお)氏の「暮らしを変えた立役者」。第16回ではバブル期に取り組んだ味のレベルアップや店舗内外装の改良を振り返ります。
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立ち食いそばをもっと知ってもらいたい。24時間営業の次は「おいしさ」に挑戦しました。
立ち食いそば店にとってのメインの客は忙しいサラリーマン。さっと食事を済ませたいとき、すぐに食べられるのが魅力とはいえ、やはり味が良くなければ、2度、3度とお店に足を運んではくれません。
「立ち食いそば」の従来イメージを払拭
よりおいしくするためにまず取り組んだのが生麺を店内でゆでることでした。それまではあらかじめ蒸した麺を店内でさっと湯をくぐらせるだけでした。店でゆでるとなると、時間も手間もかかります。代わりに麺にコシが出て、食感がまるで違ってきます。味の改良で客足はさらに伸びました。繁盛すると、増えてくるのが競合店です。
他店との違いをもっと出そう。次に取り組んだのはダシでした。きっかけはある競合店の登場。実はこの競合店を生んだのは私自身なのです。
知人を通じて、ある男性から借金を申し込まれました。気の毒に思って、250万円貸したところ、この男性が始めたのが立ち食いそば店。それも富士そばのすぐ近くに店を出していくという、いわゆるコバンザメ商法でした。
見よう見まねで始めた立ち食いそば店に負けるわけにはいきません。当時の幹部たちはコストがかかりすぎるといってみな反対しましたが、それを押し切って、ダシに使う焼津産(静岡県)かつお節の量を1.5倍にしました。前の晩からじっくり時間をかけて仕込んでいる、つゆの味が格段においしくなったのです。