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落とし物・紛失は人をパニックにさせがちだ。写真はイメージ=PIXTA

落とし物・紛失は人をパニックにさせがちだ。写真はイメージ=PIXTA

この夏、米国人男性に嫁いで10年近くなる娘が夫と息子2人の計4人で東京にやって来た。とんでもない猛暑にひるむことなく、ひと月ほど我が家に「民泊」しながら精力的にあちこち出掛け、バケーションをエンジョイしていた。

娘が「我が子に世界一おいしい日本のそばを食べさせたい(すっかりアメリカっぽくなった娘の日本語は我々よりおおげさ)」と言うから、夕方5時に自宅最寄り駅のそば店で待ち合わせることとした。そこが「世界一」かどうかははなはだ微妙だが、灼熱(しゃくねつ)の東京ではご近所のなじみ店がなによりだ。

当日、私は、都心ホテルのコーヒーハウスで、ある方に取材インタビューをしていた。午後4時には終わるはずだったが、話が弾み、気がついたら予定を30分も過ぎて4時半を回っていた。

「ああ、こんな時間まで引っ張っちゃってすみません」とおわびしながら慌ただしく会計を済ませ、取材対象者を見送り、その後、地下鉄を乗り継いで自宅方面へと急行した。

身内が近所で食事するだけの話だから、そんなに慌てる必要などないのだが、なぜか小さい子供たちは食事を前にした「グランパの乾杯」を「日本国の伝統」と教え込まれ、変に楽しみにしていたから「遅れてはまずい」と焦っていた。それがあとで「とんでもない事態」を引き起こした。

乾杯にはギリギリ間に合った。改札を素早く通れるパスモに感謝した。

うだるような都心を、電車を乗り継いで到着したそば屋。子供たちはグラスにコーラを注いで、今や遅しと待ち構えていた。

「カンパーイ!」

発声して一気に飲み干した。それほどのどがからからだった。

楽しい家族宴会の後に「財布がない」

この飲みっぷりを面白がった子供たちが「モウイッカイ、モウイッカイ!」とはやし立てるから、その気になって普段より相当のオーバーペースで飲んでしまった。

わいわいがやがやと2時間ほどが経過した。

「じゃ、そろそろ会計しようか?」

バッグの中に手を突っ込んで長財布をまさぐった「おぼろげな記憶」があった。

「もういいです。私が済ませましたから」

みんなで『夕焼け小焼け』を歌いながら家に着き、あらためてかばんを開けてみたら、財布がない。

「僕の財布から払ってくれたんだ?」

「私の財布からよ」

「僕のは?」

「知らないわよ」

とりあえずそば屋に電話した。

そば屋女将「あらまあ、それは大変。あの個室、きょうは梶原さんたちしか使っていませんから、あるとすればすぐに見つかると思います、ちょっとお待ちくださいね」

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