いとうまい子流の学び 介護予防ロボット研究にまい進

介護予防ロボットで注目を浴びる

 早大のeスクールは通信教育課程とはいえ、選択した科目を時間内にきっちり履修しないとシビアに落とされるのだそうだ。「好きなときに自分のペースで無理なく学べ、卒業時期も自分で選べる、学費も安い」と噂される従来型とは真逆だ。

 学費は通学生と同じ年間100万円レベルと安くはない。成績評価は厳密に行われる。ゼミもある。プレゼンテーションもある。レジュメも作る。もちろん卒論もある。芸能界という厳しい競争社会を生きてきたいとうさんには、この「ゆるさゼロ」がむしろ心地よかったらしい。

いとうまい子さんは博士課程へ進んでロボット研究を続けている

 ゼミの同級生である整形外科医師がクラスで口にした「ロコモティブシンドローム」という言葉が耳に残ったそうだ。その後、クラスの仲間や教授とのディスカッションから学びを深め、一方で福祉ロボット開発で名高い可部昭克教授の教えを独自に融合させた卒論とともに、彼女にとっては「介護予防ロボット第1号」ともいうべき「作品」を作り上げ学内外で注目を集めた。

 「大学院でも研究なさるようでしたら、協力させてください」。彼女のロボットを見た「業界の方」の声もあり、学部の成績優秀者として大学院への推薦状をも授与された彼女は2014年に修士課程へ進み、ここからは所沢キャンパスに日参する日々が始まった。

 東京での仕事以外に、レギュラーで名古屋の生放送、地方のロケがあるいとうさん。論文研究に加え、年間30課目の受講をクリアするという、アイドル時代に勝るとも劣らない「ギリギリのスケジュール」で研究を続けたようだ。

いとう「各課目、それぞれで与えられたテーマにつき、自分で調べ、角度をつけ、掘り下げ、自分の考察をまとめる。それをパワーポイントに作り込み、発表し、ディスカッションし、評価される。毎回その繰り返し。もちろん同時並行で論文研究と新型ロボット作成に取り組みます。材料調達の交渉ももちろん私がやります。AD(アシスタントディレクター)さんはいないですからね」

博士課程でも学び続ける日々

 修士の2年間で課題科目、論文、そしてロコモティブシンドローム予防を目的としたスクワット運動をアシストする卓上型ロボット「ロコピョン」開発にも成果を上げた。

 いとうさんの話を聞きながら、私は、自分がカウンセリング専攻の大学院生だった40歳代の終わりごろを思い出した。指導担当だった国分康孝教授の厳しく温かい励ましをいただきながら調査表を配るため街をさまよい、慣れないパソコンで統計の数字を出し、図表を作り、1日にわずか1ページしか書けなかった情けない自分を。話が横にそれてしまった。

 2016年に修士課程を修了したいとうさんは、さらなる高みを目指し、博士課程へと進んだ。現在も「予防医学」を促進するロボットの開発研究を続けている。「世間の方々への恩返し」という志は揺るがない。

いとう「サラリーマンの方も、入社試験をパスしたら、その後の人生は安泰だという訳にはいかない状況ですよね」

梶原「そりゃあ、今はキツいでしょう!いとうさんがやっている、自分で決めたり、与えられたりするテーマを調べ掘り下げ、レジュメを作ったり、パワポにしたりしてプレゼンして、討論して、最終的に製品に仕上げ、成果を上げる。同じかもしれませんね」

いとう「どんな分野でも、自分をバージョンアップしていかないと誰も手を貸してくれない厳しい時代なんですね。私の場合は、一歩でも昨日と違う自分でいられるためには、勉強するしかないと思っています。『これって、今の問題解決には直接関係ないけど、とりあえず勉強しとこうかしら』なーんてやっておくと、不思議にそれを生かすチャンスが訪れる。幸運の女神は勉強する人を好いてくれる気がします」

 博士課程で「ロボット研究」を続けるいとうさん。「介護予防」に寄与することでの「世の中への恩返しの夢」は着実に前進しているようだ。

※「梶原しげるの「しゃべりテク」」は毎月第2、4木曜更新です。次回は2018年8月23日の予定です。

梶原しげる
1950年生まれ。早稲田大学卒業後、文化放送のアナウンサーに。92年からフリー。司会業を中心に活躍中。東京成徳大学客員教授(心理学修士)。「日本語検定」審議委員。著書に「すべらない敬語」「まずは『ドジな話』をしなさい」など。

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