2011/8/5

耳寄りな話題

坂の途中にある大谷駅ではホームの傾斜に合わせ、ベンチの脚の長さが異なる(大津市)

次の電車が近づくとき、線路から水煙が噴き出すのに気づいた。夏の暑さで冷やしているのかと思ったら、「車輪のきしみ音を消すためです」(大津鉄道部の尼田賢光部長)とのこと。近くに民家がある半径100メートル以内のきついカーブには、自動で水煙が噴き出す仕組みを備えている。

大谷駅(大津市)でも面白いものを見つけた。「ホームのベンチは左右で脚の長さが8センチ違う」(木村さん)のだ。理由は駅自体が傾斜しているから。軌道法では駅の勾配上限は10‰(パーミル=1000メートル進むうちに10メートル登る傾斜)だが、大谷駅は40‰。京津線が4両編成になったとき、ホームを延長する場所がなかったため、特認を受けた。

大谷駅近くには61‰の急勾配区間も。急勾配の観光路線を持つ鉄道6社でつくる「全国登山鉄道‰会」でも、京津線をしのぐ急勾配区間を持つのは箱根登山鉄道と大井川鉄道のアプト式(歯形のレールと車両床下の歯車を組み合わせる形式)路線だけだ。

4年前まで京津線を運転し、今は大阪・淀屋橋駅と京都・出町柳駅を結ぶ京阪本線を担当する中村邦彰運転士は「本線に比べ注意する場面が多く緊張するが、雪化粧した逢坂山付近はきれい」と話す。

京津線は京都市営地下鉄東西線に乗り入れている。京津線を走る800系車両は運転中、パンタグラフの高さが変わる。欧州などで路面電車が都心部で地下を走る都市はあるが「路面電車と地下鉄、両方の保安装置を備える鉄道はここだけ」と経営統括室の松下靖広報宣伝担当部長。

特殊構造の800系は1両(16・5メートル)約2億円と、本線の新鋭10000系の1・4倍。ちなみに新幹線は1両(約25メートル)約3億円。「1メートルあたりなら、高速走行して室内構造も立派な新幹線よりもぜいたく」(松下部長)だ。

来年開業100年の京津線。夏休みに1日乗車券で乗り歩きするのも楽しそうだ。

(大津支局長 紙谷樹)

[日本経済新聞大阪夕刊オムニス関西2011年8月3日付]

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