IT業界から熱燗の伝道者に 減収覚悟で転身の先見

山梨移住で一軒家暮らし

しかし、広い住まいを借りる金はない。そんな折、友人が山梨県上野原市の一軒家を紹介してくれた。

上野原はJR高尾駅まで中央線でわずか17分で、八王子へもそんなに遠くはない。東京都内に通勤する人も少なくない。

物件は4LDKの一戸建てで、家賃はこの地区でもなかなかない5万円だと聞き、つけたろうさんは飛び付いた。

家の周囲は大家さんの親類が管理する野菜畑が広がっていて、夏ならキュウリやナス、キャベツ、レタスは「自由に採って食べてOK(つけたろうさんに限る)」だという。この先の秋、冬はまた別の作物も楽しめるらしい。食料費の節約になるだけでなく、熱燗に添えて出すピクルスの原料にもなりそうだ。

熱燗DJつけたろうさんはIT系企業から大胆に転身した

転居から3カ月がたち、「遠距離通勤」にもすっかりなじんだつけたろうさんは決断した。

「会社の仕事に何一つ不満はない。でも、それを超えた熱狂が目の前にある。サラリーマンの余技、趣味の域をはるかに超えたという自負もある。よし、熱燗一本で生きていこう!」

遠距離通勤が「移住」に変わった瞬間だ。

意外だった父の反応

梶原「うーん。正直言って、熱燗つけたろうよりIT企業の管理職のほうが収入も、将来の安定においても有利だし、親だって反対したんじゃない? 『はあ、熱燗? 熱燗でどうやって食ってくんだ。人生、なめるんじゃない』ぐらい言われても、おかしくないよねえ」

つけたろう「でしょう? ところがおやじの反応は意外でした!」(以下、梶原の想像に基づく、父と息子の会話再現)

「熱燗関係の仕事って、今、父さんの頭には日本酒の熱燗ぐらいしか思いつかないんだ。お前が言うぐらいだから、何か、IT関連の横文字系の仕事か?」

息子「その、酒の熱燗さ」

「酒造会社に転職するのか?」

息子「熱燗のおいしさを世の中に広めるイベントを仕事にしたい」

つけたろうさんは、父親が、「ウーン」としばらく沈黙した後の一言が、今も忘れられないという。

「死なない程度に頑張れ」

出来た父親だ。

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