地域医療・研修医も主役 可能性広げた「ER」の功績医療ドラマは時代の鏡(中)

医療ドラマの歴史を変えた「ER緊急救命室」。最終的に15シーズンまで作られた(2001年)=ロイター
医療ドラマの歴史を変えた「ER緊急救命室」。最終的に15シーズンまで作られた(2001年)=ロイター

80年代から長きにわたり、医療ドラマ不毛の時代といわれた米国で、1994年、医療ドラマの歴史を大きく変える画期的な作品が生まれる。『ER緊急救命室』である。

日本でもNHKのBS放送などで放映され、大人気を博した。タイトルの通り、緊急救命室を描いたドラマで、圧倒的なリアリティとスピード感、主要なキャストたちの織りなす群像劇が新機軸だった。

原作は、映画『ジュラシック・パーク』などで知られるベストセラー作家のマイケル・クライトンである。自身の医学生時代を描いた小説「五人のカルテ」をベースに、自ら制作総指揮も務めた。

放送開始の翌年には、エミー賞を8部門で受賞し、以後、全米最高視聴率記録を度々更新するなど大人気を博して、最終的に15シーズンまで作られた。同ドラマから、無名の役者だったジョージ・クルーニーが一躍スターダムにのし上がるなど、多くの有名俳優たちを輩出したことでも知られる。

「ER」の2つの発明

一般に、医療ドラマの歴史はこう分けられる。「ER以前」と「ER以降」と。

それぐらい、同ドラマの登場は大きかった。『ER』の功績は、単に自らのヒットに留まらず、医療ドラマの歴史を大きく変えたことにある。そこには、2つの発明があった。

1つはリアリティである。それまでの医療ドラマは物語性が重視され、正直、医療シーンは象徴的に扱われるくらいだった。よくある「メス」とか「汗」とかの指図だったり、心電図がゼロを指して慌てて心臓マッサージや電気ショックなどの蘇生措置を施したり。それが、「ER」は、1分1秒を争う現場の状況を、ステディカム(カメラ安定支持機材)を駆使してスピーディに、臨場感たっぷりに描いたのだ。そのリアリティに視聴者はひきつけられたのである。目から鱗(うろこ)だった。リアルに医療シーンを描けば、それだけでドラマは成立することを「ER」は証明したのである。

もう1つは群像劇だ。それまでの医療ドラマは主人公を中心に物語が展開されたが、「ER」は1つのチームを描き、個々の登場人物に光を当てた。その結果、人間関係が掘り下げられ、より重厚なストーリーが生まれたのである。

リアリティと群像劇。「ER」が発明した二つの要素は、医療ドラマの可能性を広げ、21世紀、日米ともに未曽有の医療ドラマブームが到来するのである。

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