80年代を象徴する医療ドラマ

80年代、米国のテレビ界は医療ドラマ不毛の時代に陥る。それは日本も同様だった。

そんな中で生まれた数少ない佳作が、1981年と1982年、正編と続編が放映された『野々村病院物語』(TBS系)である。理想の病院を求めて開業する医師・野々村を宇津井健が好演し、脇を津川雅彦、関口宏、木内みどりらベテラン勢が固め、看護師の主任役で当時人気の夏目雅子が注目を浴びた。

物語のフォーマットは、病院内の多様な人間模様がメインである。そこには、難解な病名やリアルな手術シーンや権力闘争が描かれることはない。「ドラマのTBS」らしい、ホームドラマ的な要素が満載だった。主題歌の谷村新司の「青年の樹」もヒット。ある意味、平和な80年代を象徴する医療ドラマだったといえる。

■三谷幸喜の連ドラデビュー作は結果オーライ

三谷幸喜氏

90年代に入るとフジテレビを起点に空前の連ドラブームが幕を開ける。あの人気脚本家も、意外な作品で連ドラデビューを飾った。1993年の三谷幸喜脚本の医療ドラマ、『振り返れば奴がいる』(フジ系)である。

元々、三谷の登板は予定していた大物脚本家が降板したことによる、ピンチヒッターだったと聞く。そのためか、その医療ドラマはオマージュにあふれた作品だった。これは三谷さん自身も公言しているが、元ネタは『白い巨塔』である。物語の終盤、石黒賢演ずる医師の石川が病に侵され、やがて死に至る描写はキャラクターの位置付けこそ違えど、『白い巨塔』の財前五郎をほうふつとさせたし、財前のアンチヒーローキャラは、織田裕二演ずる天才的なメスさばきの外科医・司馬に踏襲された。

同ドラマは脚本段階ではコメディーシーンが満載だったという。だが、当時の三谷は一介の新人脚本家。発言力はなく、ことごとく演出家にカットされる。その経験をもとに作られたのが、東京サンシャインボーイズの舞台劇『ラヂオの時間』(後に映画化)である。とはいえ、同ドラマは医療ドラマとしては傑作で、物語のラスト、司馬がかつての同僚・平賀(西村雅彦)の刃に倒れる場面は名シーンと評される。コメディシーンは削られたものの、シリアスな見応えのある医療ドラマに仕上がり、結果オーライである。

『白い影』(C)TBS/『ブラック・ジャック』(C)TBS

指南役
草場滋 メディアプランナー エンターテインメント企画集団「指南役」代表。テレビ番組の企画原案、映画の原作協力、雑誌連載の監修などメディアを横断して活動中。「日経エンタテインメント!」誌に連載中の「テレビ証券」は18年目。

[plusparavi(プラスパラビ) 2018年6月24日付記事を再構成]

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