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傲慢で超一流 すべては「ベン・ケーシー」で始まった 医療ドラマは時代の鏡(上)

2018/7/26

医学的リアリティーと壮大なフィクションが視聴者をひき付けた

優れた放送に贈られるギャラクシー賞の2017年度テレビ部門の優秀賞に、連続ドラマから『アンナチュラル』(TBS系)が選ばれた。純粋な医療ドラマが同賞を受賞するのは、同賞55年の歴史の中でも初めて。

同ドラマは、野木亜紀子のオリジナル脚本による法医学ミステリー。架空の「不自然死究明研究所(UDIラボ)」を舞台に、石原さとみ演じる法医解剖医の三澄ミコトが、個性豊かなメンバーたちと不自然な死(アンナチュラル・デス)に向き合い、死者の声なき声を拾いあげるというもの。生きた人を救うのが医学なら、死んだ人を救うのが法医学である。

医療ドラマが放送文化の担い手の一つとして公に評価されたことは大きい。もはや単なる娯楽じゃないと。この受賞は『アンナチュラル』という一つのドラマの栄誉に留まらない。過去から現在に至る医療ドラマ全体の快挙なのだ。

■医療ドラマは時代の鏡

そこで、医療ドラマの歴史を簡単に振り返ってみたいと思う。

一口に医療ドラマと言っても、今日その種類は多岐にわたる。孤高の天才外科医が活躍する定番路線から、権力争いモノ、救命モノ、法医学モノ、研修医モノ、産婦人科モノ、へき地医療モノ、獣医モノなどなど。

医療ドラマの歴史は、まるで生物の進化の歴史のように、一つの共通の祖先から枝分かれして発展してきたものである。 そして、ヒットする医療ドラマは、その時代の空気感を反映している。いわば「時代の鏡」なのだ。

では、早速時代をさかのぼりたいと思う。今日の医療ドラマの扉を開けたのは、あのドラマだった。

■すべては『ベン・ケーシー』から始まった

「ベン・ケーシー」で主演のビンセント・エドワーズ氏(1962年)=AP

1960年代、日本のテレビは外国ドラマであふれていた。放送枠に対して番組の供給が間に合わず、欧米からの輸入に頼っていたのだ。『ローハイド』『ララミー牧場』『パパ大好き』『サンセット77』など。中でもひときわ異彩を放っていたのが、ビンセント・エドワーズ演じる脳外科医が主人公の医療ドラマ『ベン・ケーシー』(TBS系)である。

その独特のオープニングは今でも語り継がれる。まずカメラは黒板にチョークで書かれるいくつかの記号を映し出す。「男、女、誕生、死亡、そして無限」のナレーション。続いて廊下をストレッチャーで運ばれる女性患者の視点に。流れる天井。やがて止まると、頼もしげなベン・ケーシーの顔がのぞくというもの。

当時、外国のテレビドラマといえば、西部劇やホームドラマといった単純明快な娯楽劇が主流だったところ、『ベン・ケーシー』は医療現場をリアルに描いた大人の人間ドラマで、たちまち視聴者をひきつけた。当時の人気を表す逸話に、放映される金曜の夜は、全国の銭湯がガラガラになったというのがある。事実、今もって外国ドラマの視聴率第1位である。

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