独立・起業に働き過ぎリスク 社員より自由なはずが…
経営コンサルタント 阪本啓一
自由業は勤務時間を自分で管理しやすい分、プライベートの時間を犠牲にしがちだ。写真はイメージ。=PIXTA
沖縄・久米島に滞在したときのことです。タクシーに乗り込んで、目指す居酒屋さんの店名を告げると、「ああ。●●さん(店名)はいいですね。よく予約が取れましたね。大抵は混んでるから、席に着いたら先に料理とか、あらかた注文しておくほうがいいですよ。そうしないと待つよ」と、運転手さんが教えてくれました。
店に着いたとき、「帰り、またお願いしていいですか?」と運転手さんに声を掛けると、「いいですよー」という返事。タクシーカードをもらいました。
アドバイスの通り、最初にまとめて注文して正解でした。私たちが着いた時刻は開店直後だったので、まだ空いていたのですが、その後、来るわ、来るわ。お客様が絶えません。予約なしのお客様は断られていました。
客の気持ちを巧みに先回り
おいしく、楽しく食事を終え、入店からほぼ2時間が過ぎたころ、タクシーに電話すると、「店の前にいます」。びっくりして表に出ると、やはりさっきの運転手さんが笑って待ってくれていました。「そろそろ頃合いかなと思いまして来ました」
さすがです。確実に乗ってもらえるのに加え、居酒屋からホテルまでの料金分(2500円ほど)の売り上げが立つのもわかっているわけですから、来ない手はありません。商売人です。運転手であると同時に、商売マインドがとても優れた人なんだなと感心しました。
その運転手さんは47歳まで会社勤めをして、一念発起してタクシー運転手となりました。奥さんは最初、反対しましたが、決意の固さを見て、最後は納得してくれたそうです。
働くペースは自分で決める
「何がいいって、時間を自分で決められることです。どうしてもその気になれなければ、仕事しなくてもいい。早く帰りたいときは早く帰る。もう少し稼ぎたいと思えば、長く働けばいい」
「会社員のころは、自分で時間を決められなかった。それがストレスでした。今はストレスゼロです。だから、健康そのものです」
「きょうはね、収穫が大きかった。1日で4万円稼ぎました。明日から3日は働きません」
翌日も迎えに来てほしくて電話したのですが、運転手さんは出てくれませんでした。「3日は働かない」という言葉を実行したようです。