靴専門大手ジーフットの子会社プレステージシューズが展開する高級紳士靴ブランド「トレーディングポスト」が人気を集めている。運営する紳士靴のセレクトショップと同じ名前を付けた看板ブランドで、世界のハイエンド靴を扱ってきた知見を生かした靴づくりが根強いファンを生んでいる。紳士靴離れが進むなか、同ブランドの売り上げは前年比5割増と好調を維持している。
自社ブランドのほか、欧米の高級紳士靴を取り扱う(東京都渋谷区の店舗)セレクトショップでは英「クロケット&ジョーンズ」や米「アレン・エドモンズ」、スペイン「カルミナ」など世界で人気が高いハイエンドの紳士靴を扱う。東京や大阪、福岡などに8店を展開するほか、伊勢丹や高島屋などにも売り場を設けている。
一般に、紳士靴の高価格帯は海外ブランドが圧倒的に強く、国産ブランドはほとんどが1万~2万円台の普及価格帯の商品だ。だが、トレーディングポストは4万~8万円と比較的高額なラインアップ。国産ブランドでありながら同価格帯でも30~50代のビジネスマンをつかむ理由は、30年以上世界のハイエンド靴を扱ってきた経験を生かした靴づくりにある。
トレーディングポストでは、バイヤーが欧米の紳士靴メーカーと連携し、最新の靴情報の収集に努めている。流行のデザインや新素材をいち早く察知することで、靴づくりに生かしているのだ。
さらに、製造は国内でも有数の職人が集まる老舗靴メーカー、セントラル靴(東京・台東)と世界長ユニオン(東京・江戸川)に委託。海外から持ち帰った情報をもとに職人と話し合い商品化する。「数十年にわたる信頼関係で無理を聞いてもらえる」(トレーディングポスト青山本店の山岸真大店長)のだという。
履き心地や耐久性に優れた英国伝統の靴の製法を採用国産でありながら欧米の一流品と比べても遜色ないクオリティーを実現している点が人気の理由で、「海外ブランドを求めて(セレクトショップに)来店したが、国産のトレーディングポストにほれ込んで購入するケースも多い」(山岸氏)という。世界中の人気ブランドを扱っているにもかかわらず、セレクトショップの売り上げの3~4割がトレーディングポストだという。
アフターケアのクオリティーの高さも人気の理由だ。店頭で知識が豊富なスタッフがどのような修理をすればいいかアドバイスするほか、手作業の修理に定評のあるリペア専門工場、折田商会(東京・新宿)とも提携。「他店ではできないような職人の手作業による高度な直しができる」(山岸氏)のだという。トレーディングポストで扱っていない革靴を持ち込んで修理を依頼されるケースも多い。
好調なブランドであるが、今後も無理に規模は追わないという。国産ブランドとして欧米の大手と肩を並べて競争していくためにも、ブランドや商品をさらに磨いていく考えだ。
(鈴木慶太)
トレーディングポスト ▼1984年に立ち上げた海外の高級紳士靴を扱うセレクトショップ「トレーディングポスト」のプライベートブランド。三菱商事子会社のライフギアコーポレーションが運営していたが、2017年5月にジーフットが紳士靴事業を継承。現在はジーフット子会社のプレステージシューズが運営する。
[日経MJ 2018年3月23日付を再構成]
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