森林を楽しめるローカル線
何でもランキング
清涼感へのエクスプレス
鉄道旅行の楽しみの一つは、車窓から眺める風景や列車を包む空気感だ。節電で暑さが厳しくなりそうなこの夏、緑に抱かれ、森林を吹き抜ける風を列車に乗って感じてみてはいかがだろう。全国のローカル線の中から、森林の涼気を感じられる路線を専門家に選んでもらった。
国立・国定公園を走る東日本1位の釧網本線、ロープウエーに乗り換えて高野山に行ける西日本2位の南海高野線など、ランキングには観光地につながる路線が多く入った。さらに、釧網本線には「くしろ湿原ノロッコ号」、南海高野線は「天空」と観光列車があるように、列車に乗ること自体が目的にもなる魅力的な路線だ。
中でも東日本5位の赤沢森林鉄道は東京から新幹線、特急を使っても4時間程度、名古屋から2時間程度かかるが、往復わずか2.2キロの路線。それでも圧倒的な森林の緑と香りに「わざわざ行く価値がある」(石川敏晴さん)という声が上がった。
秘境のような雰囲気と自然の空気を感じるには外気をじかに感じられるトロッコ列車が一番。もしトロッコ列車に乗れなくても「今年は節電の影響で通勤電車でも窓を開けて乗るスタイルが定着してきた。普通の車両でも窓を開けることを嫌がる人は少なくなるのではないか」(木村嘉男さん)。ただ、窓の開かない車両もあるので事前にチェックしておきたい。
西日本1位の木次線、東日本4位の只見線のように、乗客数の少ない路線は列車の本数も限られている。うまく乗り継ぐためには列車の時刻を確認することはもちろん、宿泊施設の予約など周到な計画作りが大切になる。
「くしろ湿原ノロッコ号」をはじめ、夏休み中や連休中は混雑する観光列車も多い。自由席と指定席がある場合は「あらかじめ指定席を予約していった方が無難」(桜井寛さん)だ。
都心近郊にも絶景あり
遠くまで出かけなくても、近場の路線でも緑を楽しめる。西日本2位の南海高野線だけでなく、ランキング外でも都心部から気楽に行けるローカル線に高い評価が集まった。
箱根登山鉄道(神奈川県)は早川にかかる高さ約40メートルの鉄橋から眺める森林が絶景で「登山鉄道ならではの野趣があふれている」(宮原正和さん)。沿線には温泉のほか、芦ノ湖、小涌谷など景勝地も多い。
青梅線(東京都)も「多摩川の渓谷はとても都内とは思えない」(野田隆さん)、「青梅を過ぎると山岳路線にひょう変する」(今尾恵介さん)。沿線には鳩ノ巣渓谷などもあり、ホリデーパス(大人2300円)を使って何度も途中下車をするのもおすすめだ。
調査の方法 鉄道に詳しい専門家11人に、森林の涼気を感じるローカル線の順位付けを依頼した。対象は全国のJR、私鉄、公営、第三セクターが運行する鉄道路線。選者は次のとおり(敬称略、五十音順)。 石川敏晴(「JTB時刻表」編集長)▽猪井貴志(マシマ・レイルウェイ・ピクチャーズ代表)▽今尾恵介(地図研究家)▽木村嘉男(鉄道図書編集者)▽桜井寛(鉄道フォトジャーナリスト)▽高橋淳(近畿日本ツーリスト国内旅行部業務課長)▽中井精也(鉄道写真家)▽野田隆(オールアバウト「鉄道」ガイド)▽平岩美香(旅の手帖編集部)▽南正時(鉄道写真家)▽宮原正和(「鉄道ジャーナル」編集長)
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