夏向けの姉妹のようなスイーツに、食べるのが惜しいほどの逸品が増えている。
進化する「ぷるふわ」スイーツ2種を、12人の専門家がそれぞれランキングした。
食感異なる 似たもの同士
ババロアは牛乳、卵、砂糖を混ぜ合わせたものに泡立てた生クリームを加え、ゼラチンを使って冷やし固めたお菓子。ムースは生クリームや卵白を泡立てて空気を入れ、細かい泡によりふんわりと仕上げたものだ。これが基本形で、後は作り手が抹茶や果汁を加え独自のスイーツに仕上げる。ババロアはムースに比べて弾力があり「ぷるぷる」とした食感、ムースは軽くふんわりとした「ふわふわ」感が特徴といえる。それぞれ似ているようで味わいが微妙に異なる。
ババロアは16世紀ごろ、ドイツのバイエルン地方のババロワーズという飲み物が起源という説があるなど、スイーツの古典として知られてきた。そんな概念を覆したのが「花のババロア havaro」(2015年発売)。見た目も鮮やかな食用花を取り入れたこのババロアはインスタ映えすると評判を呼び、スイーツ激戦区の東京で知名度を得た。人気商品だが花の鮮度を重視して首都圏の3店舗でしか取り扱っていない。それが希少性となり、東京観光の帰りに店に立ち寄るファンも少なくない。
手にしてもらわなければおいしさも伝わらない。「驚きと楽しさ」をデザインしたスイーツが今後も増えそうだ。
とろけてふわっ 食感共存 ISSUI
伊勢丹新宿本店(東京・新宿)の限定。2008年、新宿中村屋(同)と組み和菓子ブランド「ISSUI(イッスイ)」の商品として投入した。生クリーム、つぶあん、抹茶のババロアをそれぞれ別の容器に入れ細長い3段重ねにした。「容器を高く組み合わせているので、もらった時の驚きがあり、喜ばれそう。好みの量で食べられるのも良い」(辻本士主子さん)など、選者の多くが容器をスタイリッシュと評価した。
器だけではない。「とろける食感とふわっとした食感がバランスよく備わっているので口の中で抹茶風味の広がりが早い」(平岩理緒さん)、「生クリーム、つぶあんともに本格的」(吉岡久夫さん)と味の評価も高かった。新緑の季節には抹茶のスイーツがより映える。
(1)1個648円(2)電話03・3352・1111
フルーツの甘さ すっきり相乗り 京橋千疋屋
涼しげな透明カップに入ったバニラ味のババロアに、メロンやオレンジ、キウイ、旬の果物など、果物の老舗がこだわって選んだフルーツをふんだんに盛り込んだ。軽くてプルンとしたババロアはなめらかな口当たり。ぜいたくな1品だ。「ババロア、フルーツそれぞれの甘さの相乗効果で、食べ始めると止まらない。見た目もおいしさを引き出している」(吉岡さん)、「ババロアはフルーツの繊細な風味を消さない。酸味と甘みのバランスも良い」(下井美奈子さん)などと高く評価された。
「今回の試食会は脂肪分が多くしつこく感じるババロアが多かったが、これはすっきりした質感がいい。素材の質の高さを感じた」(君島佐和子さん)という声も上がった。京橋千疋屋(東京・中央)が各地の店舗で取り扱う。人気の商品なので事前に問い合わせした方がいい。
(1)1個648円(2)電話0120・082・877
和と洋、極上のフュージョン 紀の善
東京・神楽坂の老舗甘味どころは週末になると抹茶ババロアを食べようと行列ができる。「抹茶の苦みが心地よい。手土産で男性にも喜ばれる」(神谷千佳代さん)。抹茶とあん、生クリームが三位一体となり、「ふんわりとした口どけの中に広がる抹茶の香りが濃密。和と洋の極上のフュージョン」(chicoさん)。持ち帰り用の商品を取り扱うほか、東京都内の主要百貨店でも購入できる。11~3月は本州内で冷蔵発送も。
(1)店内874円、持ち帰り658円(2)http://www.kinozen.co.jp/
ゼリーに食用花 花のババロアhavaro
食用花を入れた透明のゼリーとババロアが2層になった「花のババロア」。中でもキューブ型の「ペタル」は一見ババロアとは思えない。進化形スイーツと言える。「キラキラしたゼリーの中に花が咲き心躍る」(下井さん)インスタ映えはもちろん「一口サイズの品の良い大きさ、かわいい食用花、ヘルシーなゼリーが一体となりおいしい。ババロアもプルンとした食感」(村山なおこさん)と味も負けない。東京、千葉、神奈川各都県の計3店で扱う。
(1)8個入り1944円(2)http://www.hana-no-babaroa.com/products/
コーヒー味に懐かしさ とんかつ一幸
埼玉県春日部市のとんかつ店がデザートに振る舞っていたのが評判となり、冷蔵の通信販売に広がった。アロウカナは南米チリ原産の鶏で、卵はコクがあり黄身がしっかりしている。千葉の養鶏家から仕入れている。「滑らかな口どけとともに卵の温かみのある味が広がる。コーヒー味が入り懐かしさを感じさせる味」(辻本さん)だ。「何の飾りもないシンプルさが個性になっている」(君島さん)。
(1)6個入り3150円(2)電話048・736・7835
オレンジソース、昭和の香り 銀座千疋屋
プルンとした弾力とオレンジソースは商品名そのままの昭和の香り。「懐かしい母の味」(野山真由美さん)。「皿に美しく盛れば上質のデザートに」(chicoさん)。レストランでパティシエがデザートを自由に盛る「アシェットデセール」の雰囲気を楽しめるかも。東京・銀座本店で取り扱う。
(1)1個648円(2)https://ginza-sembikiya.jp/
夏思わせるさわやかな香り FBクリエイト
「さわやかなオレンジの香り」(瀬戸理恵子さん)で「夏の風景が目の前に広がる」(猫井登さん)。溶けていくババロアの後、バターで作ったスポンジの食感が訪れるショートケーキ。冷凍便でウェブ専門。