車社会が封じる「ちょっと一杯」

移住に立ちはだかる「思わぬ壁」って、何だろう?

渡辺「移住先って、多くの場合、完璧な『車社会』です。職場への交通手段はほぼ100%車ですね」

「特急の停まる○駅から15分の好立地」の「15分」は「徒歩」ではなく「車で」というのは常識だ。ところが、歩いたら2時間はかかることに気づかない、残念な都会人がいたりする。移住先では「徒歩で」という概念を捨てなければならないらしい。

渡辺「車のおかげで、買い物なんかは都会より便利なぐらいです。ショッピングセンターへも渋滞なしで行けますから。ところが、東京では当たり前の『仕事帰りにその辺で軽く一杯どう?』という会話はありません。全員、車ですから」

そんな些末なことはどうでもいい気がするが、渡辺さんにはそれが一番つらかったという。ストレスフルな営業マン時代の彼を支えたのは仕事の後の「軽く一杯」だった。仕事をしくじった仲間や部下を慰めたのも「このあと、軽く一杯どう?」の一言だった。

運転代行付き宴会は大仕事

梶原「代行(飲酒で運転が出来なくなった人の代わりに、依頼者の自宅に自動車を送る運転代行サービス)があるでしょう?あれを利用すれば、地方だって、軽く一杯行けるんじゃないですか?」

渡辺「代行の台数は限られていますし、複数台を、時間や場所や帰宅経路を指定して手配するというのは、手間とお金と覚悟がいるビッグイベントです。誰が計画立案し、経費はどういう割合で負担するのかなど、具体的に考えると気が重くなりません?」

梶原「地方で『軽く一杯』は、あんまり軽くないんだ……」

渡辺「たとえば、地元の男性は仕事が終わると職場から自宅へ車で直行、まず風呂。その後は奥さんが用意した夕飯を家族そろって楽しみながら、お父さんはゆったり晩酌。おおむねそんな穏やかな日々を過ごしています」

次のページ
地方に残る濃密な「おもてなし」