仕事ファースト・人セカンド 起業始めは「雇わない」経営コンサルタント 阪本啓一

あえて「1人社長」を選ぶ人も珍しくない。 写真はイメージ=PIXTA
あえて「1人社長」を選ぶ人も珍しくない。 写真はイメージ=PIXTA

私は大手メーカーに19年勤務した後、独立、起業しブランドクリエイターとしてセカンドキャリアを楽しんでいます。大組織にいた時期は、やはり「人の問題」がいろいろありました。お局(つぼね)様に部下がいじめられ、そのお局様の上司が同期だったので、「何とかならないか」と打診したところ、「そんな事実はないと聞いている」と、政治家みたいな返答をされ、まだ若かった私は頭を抱えました。

自分自身も上司とその取り巻きにいじめられ、「会社って、仕事だけやってればいいんじゃないんだ」と思い知りました。そういうなかでも、いわゆる政治的な動きというのか、泳ぎ方が上手な人はいるもので(先述の同期君もその一人)、そういう人は早く出世していきました。

大組織は「薄まる」メリットがある

独立、起業したとき、「あの上司○○さんのいじめのおかげで会社を辞める決心がついた。むしろ恩人だな」と思ったのですが、渦中にいるときはそんな気持ちにはなれません。やがて、部署が変わりました。上司が私を追い出したのです。敗北感はあったものの、「これでまっさらの気持ちになれる」と気を取り直したものでした。

ちょうど初めて翻訳した『パーミションマーケティング』がベストセラーになっていたこともあり、「会社でダメでも、こっち(副業)があるさ」と考えることができたのも大きかった。このように、大組織は人が多い分、トラブルもありますが、人事異動や配置換えがあるおかげで人間関係やマンネリ感が「薄まる」というメリットもあります。

ところが、セカンドキャリアとして起業し、小さな会社を始めた、または小さな会社に入った場合、薄まらないわけです。昨日もきょうも明日も同じ顔を見て仕事しなければなりません。転勤はないし、部署替えもない。どうしましょう。

簡単に人を雇わない

起業し、会社を作りました。さあ、社長になった! 一人で社長というのは何となく座りが悪い。せめて一人ぐらいは社員を雇ってみたい。経営者のロマンとしてはわかりますが、人を雇うのは生まれたての赤ん坊をお風呂に入れるぐらい慎重になりましょう。慎重になり過ぎというのはありません。理由は三つあります。

第一に、日本で人を雇うのはものすごくコストがかかります。会社員のときには気づきませんが、給与だけではなく、健康保険、厚生年金、雇用保険などのほか、交通費、賞与、など、驚くほどキャッシュが出ていきます。

第二に、日本の法律や社会風潮は、被雇用者に優しく、雇用者に厳しいところがあります。まともな起業家や経営者であれば、「悪いことをしよう」とか、「うちはブラック企業でいくぜ」という人はあまりいないものです。でも、「えっ!? これってアウトなの?」ということって、結構あります。そして事前にはなかなかわからないものです。セクハラ、パワハラ発言とかがしばしば批判を浴びますが、どれがアウトで、どれがセーフかは、なかなか見極めが難しく、細部にまで気が回らないことはあり得ます。起業したばかりの小さい会社ではなおさらです。

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