ギリギリになって仕事を始めるタイプ どう制御する?
第25回 目標を着実に達成する「タイムマシン法」
突貫工事のプロがはびこるわけ
単純に割り算すれば、毎日20ずつ着実にやっていくと、ちょうど納期に間に合います。ただ、これだと出来栄えをチェックする時間がなく、病気などの予期せぬ状況にも対応できません。最初の2日で一気に70くらいまで持っていき、余裕をもって納期をむかえるのが賢いやり方です。
組織にとって一番困るのが、しばらく放置しておいて、残り2日くらいになって一気に仕上げようとする人です。いわば突貫工事のプロフェッショナルです。
本人は、集中して取り組むことで、いい仕事をしているつもりです。困難なミッションをやり終えた達成感もあります。
ところが、実際にはやりこなすのでいっぱいいっぱい。そこから、さらに練り直して完成度を上げる余裕がありません。何か一つ手順が狂うと、期限に間に合わない恐れもあります。
さらにやっかいなのが、途中経過をチェックできないことです。締め切り前日になって、最終成果物のイメージが違っていたとしても後の祭り。やり直す暇はなく、納期優先でそのまま突っ走るしかありません。
こんなメンバーがチームに一人でもいると周りは大変です。ヤキモキしながら、無事やり終えてくれるのを待つしかありません。帰るに帰れず、長時間労働の元凶の一つになります。
今から取り掛からないと大変な目に遭う
他人事だと思った方もいるかもしれませんが、大なり小なり誰にでもこの手の傾向はあります。5日間程度ならまだしも、何カ月から何年といった、長い期間の目標になると、傾向が顕著となります。
よほど意思の強い人でない限り、頭で分かっていても、「締め切りは随分先だ」「まだ余裕がある」と思ってしまいます。つい手をつけずに放置し、後であわてる羽目になってしまうのです。
これを避けるには、「かなり先の話でも、今から取り掛からないと大変な目に遭う」のを実感するしかありません。そのためのツールとして役立つのが「タイムマシン法」です。
未来から現在を考えるフレームワーク
たとえば、N年後の自分やチームの姿を想像して、そのときどうなっていたいか、どういう状態であればよいかを、目指す目標像(ビジョン)を明らかにします。イメージがわくように、できるだけ具体的に記述するようにしましょう。
次に、それを実現するためにはN/2年後にはどうなっていればよいかを、同じように出します。さらに、N/2年後の姿を実現するために、N/4年後はどうなっていなければならないか、を挙げていきます。
必要に応じて、この作業を何度も繰り返し、あすからすぐにでも取りかかるべきことを発見していきます。ビジョンを絵空事にしないために。
タイムマシン法を使えば、将来のビジョンを明らかにすると同時に、そこに至るロードマップができあがり、さらにビジョン実現への当事者意識が高まります。そうなるには、必ず将来を先に決めてから、現在に戻る必要があります。
年限が近くなって現実味を帯びてくると、「こんなことが本当にできるのか?」と葛藤や抵抗が生まれることがよくあります。ここでひるんで、目標のハードルを下げたのでは、タイムマシン法をやる意味がありません。
そうではなく、「どうやったらできるか?」にフォーカスして、実現へのアイデアの質を高めていくようにしましょう。現状の延長線上の発想を打ち破るのです。
未来をつかみとる2つのアプローチ
時間とは過去から未来に流れるものです。そのため、普段私たちは、現在を起点にして、その延長線上に未来を考えがちです。これを「フォアキャスティング」と呼びます。
それに対して、あるべき姿や将来像を設定してから、そこに至るには何をすればよいのか、道筋や課題を考えるのが「バックキャスティング」です。現状に未来を合わせるのではなく、未来に現状を合わせるアプローチです。
この考えは、日々の問題解決や意思決定でも役に立ちます。
たとえば、不確実なビジネスの現場では、うまくいくかどうか自信が持てない案件の判断を求められることがあります。手にしているのは過去や現在の情報しかないからです。
そんなときこそバックキャスティングです。次のように問いかけてみるのです。
「もし見事な成功を勝ち取ったとしたら、何が決め手になったのだろうか?」
「もし手痛い失敗に遭ったとしたら、最大の原因は何だっただろうか?」
こうして、あぶり出した要因が、自分たちで対処できるものかどうかを議論して、いけそうならゴーすればいいのです。まさに、タイムマシンに乗って未来に飛び、そこから現在に戻ってくる逆転の発想です。