実は日本語エリート? 外国人コンビニ店員がすごい

梶原「街中の居酒屋でバイトする外国人の若者を見かけますが、あの人たちは?」

「N3(日常的な場面で、やや自然に近いスピードのまとまりのある会話を聞いて、話の具体的な内容を登場人物の関係などとあわせてほぼ理解できる)レベルに到達して初めて無理なくできる仕事ですね」

梶原「言葉のスキル次第で就ける仕事が違うんですね」

「たまたまバイトを例にお話ししたんですが、生徒たちはバイトを目的に学校に来るわけではありません。残念ながら、そういう日本語学校が存在することも事実ですが。ただし、日本語のレベルを上げることが職業選択の幅を広げ、より豊かな人生を手にできるという認識は彼らが共通に持っていて、それは私たち日本人にはあまりない感覚かもしれません」

日本語力と収入の関係

梶原「下品な言い方をすれば、日本語力を上げれば金持ちになれる?」

「そう言えなくはないですね。たとえばこの学校にはそれぞれの国の一流大学を卒業した人が少なくありません。ところが、そのまま母国の企業に採用されるより、その国に進出している日本企業に雇用されれば給料が何倍にもなるというケースは珍しくありませんから、あえて来日して日本語を学ぶ」

梶原「日本でも外資系企業(主として欧米系)は給料が高いと憧れる若者が少なくないですが、そういう感じですかねえ」

「給与水準について言えば、一部を除くと、アジアの国の企業と日本企業の差は一般に思われている以上にあります」

日本企業で働くという「ステータス」

国外の企業に職を求めるとなれば、まずはその国の言葉に通じていることも要件の一つだろう。日本企業で働くためにはそれなりの日本語スキルが欠かせない。その力を測る「日本語能力のものさし」がNに添えた数字の1~5で示されるということになるらしい。

「たとえばアジア某国の一流企業の大卒初任給が5万円としましょう。日本語がN2の資格を持って日系企業に就職すれば約3倍の15万円。N1を持っていれば、より高い仕事力が期待され4倍の20万円。日本から見れば『普通』にも見えそうな『20万円』ですが、平均収入も土地も家賃も食費も全てが格段に安い現地では、親兄弟の面倒を見るのに十分な給料です。その後の昇級も日本並み。世界では『日本企業という外資系』は我々の想像以上に『高いステータスを保証する国』であり、その国の企業で働くことを『一族の誇り』と喜ぶ親たちがいます」

梶原「日本企業に就職すると、親孝行ができるんだあ……」

「そういう一家はご近所の憧れの的になるでしょうね。となれば『よし! 自分だって!』と闘志を燃やす若い世代が次々と日本を目指す原動力になりますよね」

梶原「は~。日本語という外国語能力を高めると、お金と地位と名誉が手に入り、一族郎党が誇りに思ってくれる! そりゃあ日本語学習に熱が入るってもんですね」

「語学学習には強烈なモチベーションが大切だといわれるのはそういうことですね」

「いらっしゃいませ!」「こんばんは!」「宅急便ですね?」

コンビニでかいがいしく働く「サリムさん」「チャドさん」が「親孝行できる日」は、そう遠くなさそうだ。

※「梶原しげるの「しゃべりテク」」は毎月第2、4木曜更新です。次回は2018年5月10日の予定です。

梶原しげる

1950年生まれ。早稲田大学卒業後、文化放送のアナウンサーに。92年からフリー。司会業を中心に活躍中。東京成徳大学客員教授(心理学修士)。「日本語検定」審議委員。著書に「すべらない敬語」「まずは『ドジな話』をしなさい」など。

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