「資金繰り不安」を受け入れる 起業家の心構え
シェアオフィスが増えて起業コストは下がってきたが、やはり毎月の出費は負担になる。写真はイメージ(東京都千代田区のウィーワーク丸の内北口)
「机上の空論」とはよく言ったものです。頭ではわかっていたつもりだったのに、体験して初めて「こういうことだったか!」と合点することがあります。私にとっては、それが「資金繰り」でした。
資金管理に関する理屈については一通り理解していたつもりです。しかし、実際に起業してみると、理屈とはまるでちがう「現実」が次々に現れました。今回はそんな経験をもとに、人生100年時代における「資金繰りの心構え」についてお話ししましょう。
資金繰りをめぐる厳しい現実
独立してまず思い知ったのが「都心の家賃は高い」ということです。立地の良い場所、きれいなビルを借りようとすると、これほど家賃が高いものかと驚きました。それまで勤め人だった私は、恥ずかしながら「オフィスの家賃」など意識することがなかったのです。
個人で起業すると、家賃はすべて自分の負担です。大枚の保証金を払ったうえ、高額の家賃が月々出ていきます。それは頭ではわかっていたつもりだったものの、現実の重みは全く違いました。
辞めてすぐに「勤め人はなんと幸せだったのだろう」と実感したことを覚えています。
家賃に加え、人を雇うと、これまた月々の人件費支払いがのしかかってきます。家賃も人件費も毎月出ていくので、資金繰りは「月次」で考えねばなりません。
この段階で教科書的な「キャッシュフロー計算書」とは別の世界があるんだと思い知るわけです。キャッシュフロー計算書は「年次」で作成されますが、現実の資金繰りは「月次」なのです。年間レベルで黒字だからといって安心はできません。それでも月次レベルで、「どこかの月は赤字」がありうるからです。