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梶原しげるの「しゃべりテク」

桜並木を津波到達点の目印に 命を守る植樹続ける

2018/4/5

岡本「1.5メートルぐらいなら、植えやすいし、値段も3000円ほどで済みます。ところが、こういう若くて柔らかい苗木は鹿に簡単に食べられてしまう。そこで我々は、このように3メートルほどの背丈のもので、鹿の口が届く下半分はプラスチックのカバーで巻ける太さのものを使います。値段は1本あたり1万3000円から1万5000円」

梶原「わ、高!」

岡本「とても貴重なものですから、鹿の食害だけでなく、雑草に栄養を奪われないように、我々スタッフがこまめに草刈りし、剪(せん)定し、虫の駆除をします。畑に植えた場合などは、葉や花びらが影になって農作物に悪い影響を与えないようにと、しっかりとしたメンテナンスを心がけています」

梶原「大変ですね?」

■植樹ペースをあえて計画しない理由

岡本「我々が一番、心を砕くのは、地権者の方に植樹の許可を頂戴することです。桜を植えるのが『津波到達点』ですから、そこにはもともとご自宅があって、ご家族がお住まいで、その自宅も、ご家族のどなたかもが流されたという場合があります。

そういうお宅にうかがうと、『趣旨は分かった、賛同もする、しかし、桜が咲くたび、流された家や亡くなった家族を思い出すのはつらい』とおっしゃる方もいる。不遜なお願いに上がったと反省することもたびたびです。

我々は、何年間で何本植えるのだというこちらの一方的なテンポでことを進めようとしてはならないんだと思います。時間がたって、『例の植樹、しても良いよ』と言ってくださる方もいらっしゃいます。僕らは15年、20年という長いスタンスで考えています。数を植えるというより、津波の伝承が目的ですから」

梶原「まさに!」

岡本「私のもう一つの目標は、スタッフ全員が復興のために地道に、継続的に働いて、きちんと定年を迎えられる地域支援のモデルを作ること。これが今後各地で発生する災害を支える当たり前のモデルになれば良いと思っています」

梶原「1日も早く目標数字の達成とか、そういう問題じゃないですよね」

分かったような返事をしたその口でこんな質問をしてしまいます。

梶原「ところで、現在何本まで来ましたか?」

岡本「18年3月2日時点で268カ所、1324本です」

大好きだった東京の会社から地元での「起業」。インテリアデザイナーから桜の植樹へ。

「運命の転職」は着実に前へ進んでいるように見えた。

※「梶原しげるの「しゃべりテク」」は隔週木曜更新です。次回は2018年4月19日の予定です。

梶原しげる

1950年生まれ。早稲田大学卒業後、文化放送のアナウンサーに。92年からフリー。司会業を中心に活躍中。東京成徳大学客員教授(心理学修士)。「日本語検定」審議委員。著書に「すべらない敬語」「まずは『ドジな話』をしなさい」など。

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