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文学、哲学、歴史などの本は「人間」を知る手がかりになる。写真はイメージ(東京都港区の「双子のライオン堂」の書棚)

文学、哲学、歴史などの本は「人間」を知る手がかりになる。写真はイメージ(東京都港区の「双子のライオン堂」の書棚)

1999年の出版デビュー以来、私は翻訳を含めてビジネス書を約40冊書いています。子どもの頃から本は好きでしたが、会社員時代の上司の影響で、ビジネス書が好きになりました。

世の中全体が浮かれ騒いでいたバブル期は地方勤務でした。ある日、東京本社へ出張すると、同期の誰それがヘッドハンティングされたと耳にしました。大阪の某君も、どこやらに引き抜かれたとか。ヘッドハンティングなんて、テレビドラマか映画の話と思っていたのに、新人研修を一緒に受けた仲間の身に起こっているのでびっくりしました。

ところが、自分を振り返ると、日が暮れると駅前ですら真っ暗になる地方の町をウロウロしている有様。「置いていかれるのではないか?」。若かったこともあって、焦りました。

自分に課した「1日に1冊」

大都会で活躍する同期の仲間に差をつけられたくない。そこで一念発起し、1日に1冊のビジネス書を読むと決め、以来、25年以上にわたり、年間300冊は読んでいます。

読んでいますが、ここ5年ほどは、ビジネス書より、文学、哲学書、歴史書のほうが多くなっています。自分でビジネス書を書いていながら、若い人たちには「ビジネス書ばかりじゃ、栄養失調になるよ。小説を読もう、時には哲学書や歴史書にも親しもう」とアドバイスしています。理由は文学、哲学書、歴史書のほうが「人間理解」に役立つからです。

ビジネス書だけでは足りない理由

ビジネス書はサイエンス(科学)のアプローチを取ります。サイエンスは、「こうすれば、こうなる」といった因果関係が支配する世界。「部下育成の手順」「顧客獲得の方法」といったテーマの本が書店に並んでいます。いずれも、「こうすればうまくいきますよ」「誰でもこの本に書いてある通りやればいいですよ」と呼びかけます。

しかしながら、「水を100度に熱すれば沸騰する、0度にすれば凍る」というような、誰がやっても同じ結果になる再現性は残念ながら望めません。私はマーケティングがテーマの本を出していますが、売れない本もあります。売れないマーケティング本は、シャレになりません。

どうしてこうなるかというと、ビジネスは人間が人間に対して行う営みであり、ご承知のように、人間はそんな単純なものではないからです。ビジネス書ばかりでは栄養失調になるという理由はここにあります。

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