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若い来店客には「お母さんみたいな気持ち」で接する

若い来店客には「お母さんみたいな気持ち」で接する

婦人フォーマルウエアを扱う東京ソワール。冠婚葬祭向けフォーマルウエアは必需品とはいえ、ひとりの消費者が一生のうちに購入する機会は数回しかない。通常のファッションとは売り方もまったく異なる商品に携わって19年。丹治睦子さん(55)は冠婚葬祭ならではのニーズをしっかり押さえて、買い替えの頻度も少ない商品ながら、固定客を抱える販売員だ。

丹治さんがチーフを務める大丸東京店(東京・千代田)のフォーマル売り場。結婚式などで着るドレスも扱うものの、売り場の半分以上は喪服が占める。女性の喪服といえば、定番はワンピースにジャケットを合わせたアンサンブル。しかし、売り場にはタック使いがユニークな襟や透け感のある素材など、個性的なデザインの商品も豊富にそろう。

個性的なデザインは好みが分かれるため、定番のアンサンブルに比べると売り方は難しくなる。「個人的なお薦め」「ほかの店舗にはなさそう」といった基準であえて売れ残りのリスクがある商品を店頭に並べる丹治さん。「お客様の言うことを聞くだけなら誰でもできる。必要なのは提案」と力を込める。

そもそも喪服を買い慣れているという消費者は少ない。黒一色のため、一見しただけでは違いが分かりにくく、「お好みはありますか」と聞いても自分に何が合うかを明確に答えることができる人はあまりいない。かわいい系か、正統派か、人とかぶらないデザインを求める個性派か。丹治さんは「なりたいイメージを聞き出す」。

「長くやってると、雰囲気や体形に合うデザインがだいたい分かる」という丹治さん。襟の有無などで客が自ら手を伸ばすことのない商品でも似合うと思えば、「だまされたと思って着てみてください」と薦める。試着して「なるほどね」と納得してもらえるのが接客の醍醐味だという。

20歳代前後の若い来店客には「お母さんみたいな気持ち」で接する。まずは定番のデザインを紹介し、要望を聞きながらほかの商品も提案していく。「丈の短いスカートは」と問われれば、「親戚から小言を言われるわよ」とマナーも含めて諭すことも。最近のトレンドやマナーの変化を把握するため、店頭の消費者の声、本社に集まる消費者情報に広くアンテナを張っている。

一度購入すれば、10年程度は着ることになる喪服。だからこその助言もある。数年先を見据え、二の腕にゆとりのあるサイズ、子供っぽい印象にならないデザインを薦める。「そこまで考えないと、『1回しか着られなかった』と言われてしまう」。あえて小さめのサイズを選ぶ場合でも助言は伝えたうえで最終的な判断を委ねるという。

東京ソワールの販売員になったきっかけは自身の体験があったから。東京ソワールの店舗で喪服を購入した際、限られた予算で「セール品でデザインもかわいい商品を提案してくれたのがありがたかった」。自身も「お客様に『いい買い物をした』と思ってもらうことを心掛けている」という丹治さん。固定客をつかむことが難しいフォーマルウエアにあって、丹治さんの接客に満足した顧客は知人や家族を連れて再び来店することが多いという。

(奥津茜)

[日経MJ2017年10月23日付]

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