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梶原しげるの「しゃべりテク」

お茶の水女子大から競艇レーサーへ 大胆転身の理由

2018/3/22

競艇を含む公営競技(ギャンブル)では近年、若い女性の取り込みに力を入れている(埼玉県戸田市の戸田競艇場)

「リケジョの聖地」とも言われるお茶の水女子大学理学部化学科で4年間学んだ成果を「プロトン交換速度(中略)水素結合(中略)相互作用」(長いから勝手に文字を8割削った)というタイトルの卒論にまとめた中村かなえさんは2016年、大学院への進学を勝ち取り、自身のテーマである「溶液化学の研究」をさらに深められる喜びに浸っていた。そして、程なく仲間入りすることになる大学院の研究室に頻繁に顔を出し、先輩院生とも親しく交わることとなった。

あるとき、先輩の一人が就職情報雑誌を開いて中村さんに話しかけてきた。

先輩「この間、かなえちゃんが競艇レーサーに憧れたことがあるって話聞いて、どういう仕事だろうとこの雑誌でみたら、競艇選手って国家資格なんだねえ、競争倍率すごい!」

中村「え? そうなんですか?」

■公言し続けた「競艇好き」

ラジオ番組にゲストとして招いて、話を聞いたところ、中村さんの「憧れ」は幼いころ、お母さんと一緒に自転車で遠出して土手の上から見下ろした江戸川競艇場を目の当たりにしたことがきっかけだった。6艇の小さなボートが、迫力あるエンジン音と水しぶきを上げながら、うわーっと一斉に迫ってくる。身体を斜めにして操縦するレーサー達の、抜きつさされつの、せめぎ合い。そのカッコいいことといったら!

母と娘は生まれて初めて見るエキサイティングなボートレースにしばし見とれたのだ。

「ママ、私、大人になったら、ああいう人になりたい!」

こんなとき、普通の母親なら「女の子には無理」とか「あれはスポーツじゃなくて公営ギャンブルなのよ」とか「見るのはいいけど乗るのは危険」と言ったりしがちだが、中村さんのお母さんは違った。

「すごーい! 素敵な夢ねえ」

娘と一緒に目を輝かせたのだそうだ。その後、母と娘は、足繁く競艇場へ通いました、とはならなかった。

とはいえその鮮烈な「競艇体験」は「一等賞を競い合い、奪いあうって、カッコいい」という強烈なメッセージを彼女の脳裏に埋め込んだようだ。そのおかげか、小学生時代、水泳クラブに通ったかなえさんは、「水泳そのもの」というより「水泳レースに出て競い合う」のが大好きな少女となり、様々な大会で大活躍した。

その後進んだ中学校では中間、期末テストの「全科目合計得点表示」で生徒達にナンバーワンを競わせるという「レース形式」を採用していた(良い悪いは別にして)。その「レース」に夢中になったかなえさんは「1着」を取りまくり、結果として、勉強大好きな乙女へと成長していった、らしい。

高校での「勉強レース」にはさらに拍車がかかり、彼女は学友たちとの切磋琢磨(せっさたくま)の競い合いを制し、とりわけ「数字」絡みの「数学」「物理」「化学」で突出した成績をあげた。「勉強大好き」の中村かなえさんの脳裏に埋め込まれた「一等賞を競い合う競艇魂」が消滅してはいなかったようだ。

そんなこともあって「スポーツで好きなのは何?」と問われると、子供のころから「競艇かなあ」と答えていたという。「ガリ勉」と「競艇」という「意外な組み合わせ」が「受けた」こともあるのだろう。その後もずっと「競艇好き」を公言していたらしい。

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