新潟・燕の背脂ラーメン 工場で働く人のエネルギー源
新潟県燕市は日本最大の洋食器産地です。江戸時代は和釘の産地として知られていました。江戸では火事が頻発していましたが、焼けた家屋を再建するときに大量の和釘が必要とされ、燕の職人は大忙しだったといいます。
その後、包丁やキセルなどほかの金属製品に産業の裾野が広がり、いまでは洋食器だけではなく精密加工や金型などの工場がひしめいています。
特に戦後の高度成長期の燕は、殺到する注文をこなすため家族総出で働く町工場が多かったそうです。お母さんも仕事に追われます。食事は出前で済ませるしかありません。
そこに登場したのが中華そば、つまりラーメンです。立ち仕事、力仕事をしていればおなかがすきます。しかし食事に時間はかけられません。ラーメンならばズルズルと短時間ですすれます。
麺は太くて量が多ければ主食になります。具はおかずです。それに塩分を補給してくれるスープがつきます。味にこくを出し、エネルギー源になる脂が加われば言うことなし。
というわけで背脂ラーメンが燕に定着したという歴史があります。
つまり燕のラーメンは産業の発展の中で、必然的に生まれたと言えるのです。筋金入りのラーメンです。
(食と旅のコラムニスト 野瀬泰申)
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