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安全運転のドライバーが、事故を立て続けに起こすワケ 第13回 事故を未然に防ぐ「ハインリッヒの法則」

2018/2/13

■いつ起こってもよいことは連続して起こる

 先月、車のドアミラーをぶつけてしまいました。駐車していた車の脇をソロソロとすり抜けようとしたときに、ミラー同士が接触してしまったのです。相手からクラクションを鳴らされて気づきました。平謝りをして、修理代を払うことで事なきを得ました。
 それから2、3カ月後、またドアミラーをぶつける事故を起こしてしまいました。今度は、細い道を対向車とすれ違うときに、やはりミラー同士が当たってしまったのです。

 相手はかなりスピードを出しており、そのまま立ち去ってしまいました。こちらにも非があるかもしれず、「まあ、いいか」と思ってミラーの角度を直そうと思ったら、動きません。結局、自費で修理する羽目になってしまいました。

 サイコロを転がしたときと同様、「いつ起こってもよいことは、連続して起こる」。その法則を、身を持って実感したというわけです。

 なぜ、立て続けに2件、同じような小さな事故を起こしてしまったのか。私は大の車好きで、若い頃は日本国中を愛車で駆け巡ってきました。今まで事故も違反もほとんどありませんでした。

 ところが、最近、あわてて急ブレーキを踏んだり、道を間違えたりすることが増えてきました。以前より反射神経や車体感覚が落ちているのは自覚しており、十分気をつけていただけにショックです。

 この程度で済めばよいのですが、そのうち大きな事故を起こさないか、自分はもとより家族も大いに心配しています。今一度、「気を引き締めて、安全運転に心がけないと……」と思った次第です。

■労働災害から導かれた経験則がある

 私たちは、重大な事故やトラブルが起こると、直接的な原因を探して、再発を防止しようとします。二度と過ちを繰り返さないように願って。

 ところが、1件の大きな事故の裏には29件の軽い事故があるといわれています。またその裏には300件のヒヤリとしたりハッとしたりしたこと、つまり事故にならないまでも危険を感じた出来事が隠れています。

 損害保険会社で働いていたH・W・ハインリッヒは、過去の労働災害を分析して、この経験則を導き出しました。いわゆる「ハインリッヒの法則」です。

■何度も同じ失敗を繰り返すワケ

 つまり、重大な事故をなくすには、その事故に注目するだけでは不十分。300件のヒヤリ・ハットをいかに減らしていくかが大きなポイントとなります。

 たとえば、国を挙げて働き方改革に本腰を入れるキッカケとなったのが、電通の新入社員、高橋まつりさんが過労自殺した事件です。こんな痛ましい事件を二度と繰り返してはいけません。

 だからといって、自殺を防ぐ活動だけを展開しても再発は防止できません。

 ハインリッヒの法則を当てはめると、一人の若者が命を絶つには、29人の人が過労やパワハラによって心の病に苦しんでいるはずです。それをなくさない限り、また同じような事件が起こってしまいます。

 さらに、29人が心の病にかかるには、300人もの人が「ちょっとやばいかも?」「このままではウツになっちゃうよ」と、メンタルヘルスの不調を感じているはずです。

 ここにメスを入れない限り、取り返しのつかない事件を引き起こしかねません。ヒヤリ・ハットのさらに裏にある、普段気づかない無数の危ない行動や状態を減らすことが大切です。

 ハインリッヒの法則は、労働災害に限らず、事故やクレームなど、ありとあらゆる失敗を減らすことに使われています。「何度も同じ失敗を繰り返している」という組織があったら、一度このフレームワークで考えてみてはいかがでしょうか。

■どうやってインシデントを減らすか?

 実際には事故につながらなかったものの、大きな事故に至る可能性がある出来事を「インシデント」と呼びます。どうやって、インシデントを減らしていけばよいか。それを考える上で重宝するフレームワークをあわせて紹介しておきます。

 医療や介護分野でよく使われているシェル(SHEL)分析をご存じでしょうか。

 インシデントが起こったときに、(1)ソフトウエア(Software:マニュアルなど)、(2)ハードウエア(Hardware:設備・器具など)、(3)環境(Environment:職場など)、(4)人間(Liveware:性格など)の4つの視点で原因を分析する方法です。

 必ずしもどれか一つに問題があるわけではありません。インシデントによっては、それぞれに問題があって、複雑にからみあっていることもあります。

 あるいは、インシデントは3Hのときに起こりやすいといわれています。(1)初めて(1回目に行うとき)、(2)久しぶり(時間を空けて行うとき)、(3)変更した(手順や工程を変えたとき)の頭を取ってそう呼びます。

 つまり、定常的にやっている時にミスや失敗は起きにくく、何か変化が合ったときに起こってしまいます。より一層の注意が求められるわけです。

堀公俊
 日本ファシリテーション協会フェロー。大阪大学大学院工学研究科修了。大手精密機器メーカーで商品開発や経営企画に従事。1995年からファシリテーション活動を展開。2003年に日本ファシリテーション協会を設立し、研究会や講演活動を通じて普及・啓発に努める。著書に「問題解決フレームワーク大全」「会議を変えるワンフレーズ」など多数。

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