2018/1/26

暮らしを変えた立役者

中でも話題だったのがしらすだ。当時は100グラムを80円で売っていた。赤ちゃんには10グラムずつ与えるのだが、冷蔵庫の普及もまだ先で、100グラムでは多くて腐らせてしまう。そこで塩分を減らして冷凍したしらすを作って、10グラムずつ売ることにした。周辺の買い物客からは一気に評判を高めることになった。

当時はまだ「コンビニエンスストア」という業態はなかったが、我々は「食料品の便利屋」と称していた。とにかく兄弟4人で夜明けから遅くまで働いていた。1号店の店長は次男。2号店が私で、3号店は弟が店長を務めた。本部もなく、みんなが現場で働いていた。東京都清瀬市に4号店を出したときは長兄にも店長を頼んだぐらいだ。

昭和30年代は出店規制もなく、ことぶき食品は6店まで広がった。このうち国分寺市への出店後、ある歴史的な事件に巻き込まれた。「3億円事件」だ。

[日経MJ(流通新聞)2016年7月22日付]

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