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多くの人が「働き過ぎから抜け出せない」意外な理由 第12回 人材を育成する「ウィル・スキル・マトリクス」

2018/2/6

■学校形式は信用していない証し?

 皆さんは「研修」という言葉を聞くと、どんなイメージを抱くでしょうか。「つまらない」「身につかない」「役に立たない」といった、ネガティブな印象を持っている人が多いのではと思います。
 原因の一つは、やり方にあります。いまだに多くの研修が、大人数が一堂に集められ、一方的に講義を聞かされる「学校形式」で行われています。眠たいことこの上ないです。どうして学校でも企業でも、あの形をかたくなに守り続けているのでしょうか。

 あのスタイルは産業革命時代のイギリスで生まれました。少ない人数で、多数の労働者を一斉に教育するために設けられたものであり、明治期に日本にも導入されました。

 そこでは、前にいる先生(講師)と黒板(ホワイトボードやスクリーン)に向かって、生徒(受講者)全員が並んでいます。そのほうが、一時に監視できるからです。多くの職場がこの形でレイアウトされているのも同じ理由です。

 言い換えると、何もしないでおくとサボるから、見張っていないといけないわけです。当時は、勉強どころか読み書きができない人が多く、「学校に行く暇があったら働け」という時代です。知識レベルも学習意欲も著しく低かったのです。

 そんな人を相手にするのに最適なのが学校形式です。つまり、いまだに皆さんの会社の研修が学校形式で行われているとしたら、その程度の連中だと軽く見られているのかも……。

■レベルの高い人には手出しは無用

 時代は変わり、今では学習者のレベルが大幅にアップしました。強制的に指導しなくても、自ら学ぼうという人も多くいます。どんな人にどんなスタイルで育成をすればよいか。それを教えてくれるのが「ウィル・スキル・マトリクス」です。

 部下や後輩を、「やる気(Will)が高い/低い」「能力(Skill)が高い/低い」の2軸に分けて考えてみましょう。

 やる気も能力も高い人は、下手に手出しをせず、当人に委任するのが得策です。学習をする機会を与えたり、時間やお金の支援をしたり、裏方に徹するのが上司の務めとなります。研修をやるにしても、アクションラーニングのような問題解決型のものが向いています。

■やる気に火がつけば自ら学ぶようになる

 やる気があっても、能力が低い人は、適切なスキルが身につけられるよう、上司が指導する必要があります。誰かが適切に教えてあげないと、能力はアップしていきません。ロールプレイングをはじめとする、トレーニングが主体の研修が合っています。

 一方、能力が高いのにやる気が低い人は、やる気に着火しなければ宝の持ち腐れになります。興味を引く、実際に体験をさせる、業務との関連性を示す、といった方法が効果的で、ワークショップ型の研修が向いています。やったことをほめることで、やる気が高まるケースもよくあります。

 一番やっかいなのが、やる気も能力も低い人です。とりあえず上司が命令をして強制的にやらせ、一定のレベルに達するまでは、底上げをするしかありません。もうお分かりのように、悪しき学校形式が最も力を発揮するのがこの人たちです。

 私たちは、どうしても自分が育ってきたやり方を部下に踏襲しがちになります。委任で育った人は部下をほったらかしにしますし、指導で育った人はあれこれ口を出すのが常です。

 一人ひとりの特性にあったやり方をしないと、育つものも育ちません。それを考えるツールとしてウィル・スキル・マトリクスは大いに役に立ちます。

■スキルがないと長時間働くしかなくなる

 働き方改革というと、長時間労働の是正の話に光が当たりがちになります。その結果、業績が下がったのでは元も子もありません。生産性の向上こそが、働き方改革の本丸です。

 そのためには、IT(情報技術)活用や在宅勤務といった仕組みの話に加えて、一人ひとりの能力を高めることが鍵となります。働き方改革は人材改革とセットにしなければなりません。

 にもかかわらず、育成の改革はなかなか進みません。相変わらず、OJT(On The Job Training 職場内訓練)という名の下、職場に丸投げされたままです。

 ところが、任された上司は教育する時間も技術もなく、「俺の背中を見て学べ」「分からないことがあったら聞け」となります。それで埒(らち)があかないと、気まぐれで集合研修をやって、育成したつもりになります。

 こんなやり方では、外で通用する仕事のスキルが育つとは到底思えません。

 結局、容易に転職もできないので、何を言われても今の会社で頑張るしかありません。周囲の顔色を見ながら、滅私奉公とばかり長時間働くしかありません。働き方改革の根っこには、日本ならではの人材育成の問題が大きく横たわっているのです。

 一人ひとりの違いを認め、個人に最適な働き方を実現し、最大限に人材を活用しよう。それが働き方改革の基本理念です。人それぞれ目指す人材像も違えば、望ましい学び方も違います。

 一人ひとりにあった成長の仕掛けを用意すること。それを考える第一歩として、ウィル・スキル・マトリクスを活用することをお勧めします。

堀公俊
 日本ファシリテーション協会フェロー。大阪大学大学院工学研究科修了。大手精密機器メーカーにて商品開発や経営企画に従事。95年からファシリテーション活動を展開。2003年に日本ファシリテーション協会を設立し、研究会や講演活動を通じて普及・啓発に努める。著書に「問題解決フレームワーク大全」「会議を変えるワンフレーズ」など多数。

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