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「居心地が良くて、ついつい長居をしてしまう店」を目指しているという加納さん

「居心地が良くて、ついつい長居をしてしまう店」を目指しているという加納さん

ふらっと立ち寄っただけなのについ手に取ってしまう。書店チェーンの三省堂書店(東京・千代田)が運営する雑貨専門店「神保町いちのいち」はそんな一癖も二癖もある雑貨がそろう。バイヤーの加納淳一さん(43)は1号店の立ち上げから携わり、その目利きで選んだ商品で多くの消費者を引き付けている。

客に声を掛けるタイミングは決まっている。店内を一巡した後、「なんだろう」と関心を持った商品に手を伸ばしたその瞬間だ。頃合いを見計らって、「この商品にはこんな機能があるんです。わかりづらいですよね」と自身も同じ商品を手に機能を説明する。店員に尋ねようかと思っていた情報を先手を打って紹介すれば、客との距離はグッと縮まる。

いつ入店したのか。どの商品のところで立ち止まったのか。店内での客の動きは加納さんの接客に欠かせない基本情報。頭の中で常に把握し、次の動きを予測。先回りして、声を掛けるタイミングを探る。

三省堂書店の神保町本店(東京・千代田)。1階にある「神保町いちのいち」1号店はわずか100平方メートルという売り場にデザイン文具などがずらりと並ぶ。「4割の商品はパッと見ただけではわかりません」という加納さんの言葉通り、手に取って触ってみたいと思わせる商品が多い。

一見すると、文庫本。しかし、表紙のタイトルは「はのはなし。」「へそのおのはなし。」と見慣れない。手に取ってみれば、実は子供の乳歯やへその緒を保管するための木箱。こんな想像もつかない雑貨との出合いは客の記憶に残り、そのタイミングで店員から声が掛かれば、商品への関心を高める効果は大きいという。

販売促進のためのPOP(店頭販促物)はほとんど置かない。「できるだけ店員とコミュニケーションを取ってほしい」という加納さんの考えが反映されているからだ。POPで意外性の「ネタばらし」してしまえば、客が商品を手に取るという出合いの機会をそぐことになる。

コミュニケーションを第一に考える加納さんが目指すのは「居心地が良くて、ついつい長居をしてしまう店」。デザイナーなど商品の製作者を招く「出張コーナー」を定期的に設けているのもそのためだ。作り手との会話も客にとっては居心地の良さにつながる。

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