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ルールを細かく守らせたがる大企業出身者は中小企業では煙たがられがちだ =PIXTA

ルールを細かく守らせたがる大企業出身者は中小企業では煙たがられがちだ =PIXTA

経営コンサルタントとして参加した、クライアント企業での長時間ミーティングがやっと終わりました。席を立って職場に戻る参加者たち。それでもしつこく資料を見ている私に向かって先方の役員が一言、「先生、その資料、持って帰っていいですよ」。私は「ありがとうございます。では守秘義務の契約書はのちほど交わしましょう」と応じました。

コンプライアンスに一応、気を配った私。大して重要な書類でもなかったのですが、いまどきの大企業では、書類1枚持ち帰るにも注意が必要です。

すると、役員から意外な言葉が返ってきました。「いらないよ、契約書なんか。法務部と話すの、嫌いなんだ。俺、あなたが信頼できるって知っているから」

「そうですか」と、お言葉に甘えて、その場で資料をバッグに入れた私。さて、問題はそこからの帰り道です。まるで国家機密情報を運ぶかのごとく緊張した私の心境をおわかりいただけるでしょうか? 事務所でも書類は厳重に管理し、もちろん決して内容を人に話すことはありませんでした。

「あなたを信頼している」。この言葉は私の心にずしりと響きました(繰り返しますが、大した書類ではありません)。それは守秘義務契約よりはるかに強力なプレッシャーを私にもたらしたのです。

私はその役員さんが大好きです。ちなみに社内でも人望の厚い「親分肌」で有名。実はこの人の存在自体が不正行為に対する抑止力になっているのではないかと思うのです。

大企業で増殖する「管理マニュアル」

「信用してくれたあの人に迷惑を掛けられない」あるいは「世話になった上司の顔に泥は塗れない」。上司が部下にそう思わせることができれば、不正や悪事は起こりにくくなります。このような「信頼」という名の抑止力は、契約書よりはるかに効き目があるからです。しかし、昨今の大企業はそんな目に見えない「信頼」ではなく、明文化された契約書やマニュアルに頼り始めました。

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