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乗務員(クルー)はななつ星の接客のために厳しい研修を受ける(クルー任命証書を渡すJR九州の唐池氏=右)

乗務員(クルー)はななつ星の接客のために厳しい研修を受ける(クルー任命証書を渡すJR九州の唐池氏=右)

九州旅客鉄道(JR九州)の唐池恒二(からいけ・こうじ)会長の「仕事人秘録」。第12回は寝台列車「ななつ星 in 九州」プロジェクトの立ち上がり時期について語ります。

――「ななつ星 in 九州」の反対派を責任者に抜てき。

「豪華寝台列車はどう思いますか」。2009年に社長に就任して半年がたち、「ゆふいんの森」などの鉄道デザインを手掛けた水戸岡(鋭治)さんに相談したところ、「20年以上前からやりたかったことだ」と本気になって。2カ月でイメージパースを書き上げてきました。でも、当時はまだ7割ぐらいは作ろうと思っていたけれど少し迷いもあってね。

その水戸岡さんが親しい記者にも話しちゃったもんだから、週刊朝日に「寝台特急今こそ復活を」の記事でイメージパースとともに出ることに。後にひけないなと100%の決意になりました。とはいえ、社内は半信半疑の社員が多く、特に「無理ですよ」と反対していたのが運輸部長(当時)の古宮(洋二)くんでしたよ。

そこで、古宮くんらを連れ出して韓国の豪華列車「ヘラン」を視察しました。平日なのにお客さまが実に多い。「これ以上の列車を作ればいける」。帰国直後、古宮くんを営業部長に任命し、一転してななつ星の推進役に回ることに。運輸のプロが中心にいるうえ、反対派の気勢もそがれる。してやったりですね。

デザインは最初は近未来型でしたが、何か違和感が。「映画で見たようなレトロな豪華さを再現した方がいいんじゃないでしょうか」。水戸岡さんに思い切って意見しましたが悩んでいましたよ。ですが、見事に今のレトロでありながら細部に現代風の息づかいが宿るデザインに。さすが天才、水戸岡鋭治です。

――アナログがデジタルに勝つ。

2012年10月、マレーシアやタイを結ぶ「イースタン&オリエンタル・エクスプレス」に乗ることに。途中、下車して映画「戦場にかける橋」の舞台のクウェー川鉄橋に行って船にも乗りましたが、私なんかは全然面白くない。物見遊山のような観光よりも車窓を眺める方が楽しい。

「コーヒーはいかがですか」。列車では客室乗務員が絶えず話しかけに来てくれる。これが実にうれしい。私のようなそれほど鉄道が好きじゃない人間でさえも、何も考えずに過ごす旅が素晴らしいと気づきました。「極力列車に乗っていただき、アナログのような人間くさいおもてなしをしよう」

ななつ星では当初は観光地を多く回る計画でしたが、大半をばっさりとなくさせました。テレビを部屋に置いたり、クルー(乗務員)同士の連絡に(米アップルの)「iPad」を使ったりする構想も、デジタルは要らないとやめました。目指す方向性が徐々に固まってきましたね。

海外の視察は世界観を固めるのに刺激を与えてくれました。古宮くんとスペインに行った際、世界最高峰のレストラン「エル・ブジ」の本店に行こうと思ったが予約できませんでした。さすが世界一の人気店。うたい文句は「あのマドンナさえも半年待たせる」。これはいい!

[日経産業新聞2016年4月28日付]

仕事人秘録セレクションは金曜更新です。次回は2017年11月24日の予定です。

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