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「10年遅れた」ミスド改革 新型店、マンネリに風穴 ダスキンの山村輝治社長

2017/11/11

 消費はモノからコトへと言われる昨今。ダスキンの経営はそんな経済構造の変化を反映している印象だ。「ミスタードーナツ」とモップのレンタルは苦戦し、家事代行などサービスが成長をけん引。高齢者向け事業の強化にも動いている。山村輝治社長はコトを磨くとともに新型店舗を軸にミスドの立て直しに余念がない。

 ――最近、ミスドのテレビコマーシャルが減った印象です。

 「極端には減らしてはいませんが、3年ほど前からネットに軸足をシフトしています。ネットの方が若い人に情報が流れやすいですから。もっともチラシは中高年層がしっかり見ていますね」

 ――ミスドのヘビーユーザーはまさに中高年。

 「40~50代くらいで、近年は販売個数が減少しています。というのもかつては子供が2~3人いる家族が中心で、1度の買い物で8~12個購入していました。我が家の場合だと子供が自立し、買っても5個ぐらい。カロリーを気にするお客様も増えていますし」

■路線踏襲続け、消費者と距離

 ――これまでもコンビニエンスストア含めてスイーツのライバルが登場し、対応策も打ってきました。ですが今は縮小路線。経営判断が遅れたのですか。

 「子供が減っているのに、従来のファミリー層が持ち帰るイメージの店舗作りや商品作りを踏襲してきました。しかも働く女性が増えて、家には誰もいない。お客様にとって身近な存在ではなく、距離の遠いドーナツになってしまいました。10年は遅れてしまった」

 「スターバックスやタリーズがすごいのはテレビコマーシャルを見たことがないのに、アルバイトもしっかり定着しています。お店もおしゃれで、カフェとの戦いになっているのにドーナツだけおいしければいいというものではありません」

 ――それで改革に動き出したのですね。

ダスキンは大都市圏の駅ビルなどに「to go」の出店を加速する(東京・池袋の店舗)

 「これまでの店は1980年代に出した『80タイプ』、その半分の投資コストの『50タイプ』などがありました。3年前からスクラップ&ビルドで改めようと4タイプに分けました。1つ目がミニドーナツなど新しい商品をそろえた『to go』、2つ目がカフェタイプ、3つ目がフードコート内に出すタイプ、そして従来型の店です」

 「ミスドは約80%が持ち帰りで、食べる時間は昼すぎから夕方までと限られている。そこで持ち帰りが減る中、1つ目と2つ目で朝食、昼食需要を取り込みたいと考えています。加盟店には昨年に説明し、積極的に対応してもらっています」

 ――ところでセブン―イレブン・ジャパンとのドーナツ戦争の総括はいかがですか。

 「セブンが参入して最初の半年ほどは5%ぐらいの影響を被りました。今はほとんど関係ありません。特にコンビニが袋詰めにしてからドーナツ扱いしなくなったのでは。それでもドーナツ市場を膨らませたのは事実。しかもコンビニは男性がコーヒーを頼んでドーナツを食べますが、ミスドは男性が入りにくいので、違う客層を開拓したと感じています」

 「お店のタイプもシーンに合わせていきます。これまでは店のパッケージにあった立地を探していましたが、今は逆で立地条件に応じた店のパッケージを柔軟に変えていこうと。何とか新タイプで1200店ぐらいを維持していきたいです」

■『逃げ恥』効果、採用にプラス

 ――清掃などサービスは好調ですね。

 「働く女性が増えてきたことと、高齢化ですね。以前は自分でできたことがつらくなっているようです。モップのレンタルは2%減ぐらいですが、清掃や家事代行は7~8%ぐらいの成長です」

 ――家事代行が主役だった人気ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』の効果はありましたか。

 「直接の効果はありませんが、業界のイメージは良くなりました。採用面ではプラスになったと思います」

 ――『逃げ恥』がなくても市場の潜在需要は大きいですしね。

 「そうですね。ただ他社との掃除の仕上がりの差はなくなると思います。そうなるとポイントはスタッフの信用度です。家族や親族でもない人を家の中に入れ、見られてしまうのですから。安さで他社を利用されても、いずれ当社に戻ってきます。継続的な教育がダスキンの強みです」

 「所得に余裕のある方は掃除の間、鍵を預けて映画など趣味の時間に充てます。時間を買う感覚なのでしょう」

 ――レンタルサービスの場合、訪問されることが顧客のストレスになります。

 「かつては説明商品と呼んでいました。都市部では会わないことが最高のサービスと思うお客様がいます。3年前に郵便ポストでの返却、カード決済も始めました。創業者は『道と経済の合一』を唱えました。道とは時代が変わっても変えてはいけない商人としての道ですが、経済は世の中の変化に合わせてどんどん変えていかなければいけません。その意味ではミスドとレンタル部門は成功体験から抜けきれなかった反省があります」

(聞き手は日経MJ編集長 中村直文)

山村輝治
 1957年大阪体育大卒。82年ダスキン入社。04年取締役クリーンサービス事業本部副本部長などを経て09年から現職。子供は3人。休日にはジョギングを楽しむ。大阪府出身。60歳。
フード事業反転攻勢へ
 ダスキンの2017年3月期の売上高は前の期比2%減の1618億円。家事代行などのクリーン・ケア事業は堅調だったが、ミスタードーナツなどフード事業が不採算店閉鎖などで9%減ったことが響いた。営業利益は13%増の60億円だった。
 今期はフード事業の反転攻勢へ、ミスドの持ち帰り専門店「to go」の出店を強化。ドーナツは近隣の店舗で揚げるため、フライヤーが不要になり、駅ビルや商業施設への展開がしやすくなる。人件費なども抑えられ、収益改善にもつながる。中期的に200店体制を目指す。(出口広元)

[日経MJ2017年5月29日付]

「トップに聞くセレクション」は原則隔週土曜日に掲載します。

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