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渋谷ヒカリエの生花店長 客の「欲しい」引き出す話術 日比谷花壇 鈴木香菜さん

2017/11/15

8月10日の「ハートの日」には「飾らない美しさ」という花言葉を持つアンスリウムで売り場を飾り付けた

 ファッションビル「渋谷ヒカリエ」(東京・渋谷)の地下3階。東京メトロなどの渋谷駅とつながるエントランスを入ると、日比谷花壇(東京・港)の生花店「ヒビヤカダン スタイル ヴィフ 渋谷ヒカリエシンクス店」がある。店長の鈴木香菜さん(27)は会話を通じ、買い物客の「欲しいなあ」という気持ちを自然に盛り上げる。

 性別や年齢、服装などの見た目の印象に加え、時間を気にしているかといったそぶりにも目を配り、言葉を探す。急ぐ様子があれば、「何かお探しですか」と直球勝負。ゆっくりと花を選んでいる客には「このお花珍しいですよね」と興味をそそる。お目当ての商品を手にした買い物帰りの客には買い物袋の中身に合わせた花を提案する。

 2013年に入社し、JR恵比寿駅(東京・渋谷)の駅ビルに入る「ヒビヤカダン スタイル アトレ恵比寿店」で経験を積んだ。社内コンテストで入賞し、売り場指導のために赴任した「ヒビヤカダン スタイル 福岡三越店」(福岡市)を経て、16年11月からヴィフの店長を務める。17年に入り、2~7月の家庭用生花の売上高は前年実績比で3割伸びた。

 会話のきっかけづくりでも工夫を欠かさない。花言葉や季節イベントなど、自らが販売する商品にまつわる情報をきめ細かく調べ、伝えている。例えば、「ハートの日」の8月10日には売り場を「飾らない美しさ」という花言葉を持つアンスリウムを中心に飾った。様々な情報は消費者が「花を飾るとき、人に贈るときの楽しみを増やす」。

 店長として、鈴木さんはこうした接客術を一緒に働くスタッフに積極的に紹介する。月1回のミーティングではスタッフ全員で翌月のイベントを確認。6月のミーティングでは七夕に関し、「由来は?」「短冊の色が違う理由は?」といった疑問への答えを探った。こうして身につけた情報が接客の際、会話を盛り上げるネタになる。

 共有した情報はさらに売り場づくりにも反映。ハートの日の仕掛けでは「折り紙でハートをつくって飾るのはどう」「ハート形の鉢に入ったプリザーブドフラワーがすてき」といったスタッフの意見を採用した。

 突っ込んだ会話ができた顧客とのつながりはその場かぎりで終わらせない。会話の内容、購入した商品などをノートにまとめて記録する。

 「夫と食卓で話すきっかけがほしい」と相談を持ち掛けられたのは夫婦げんかの気晴らしに買い物に来たという女性だった。「食卓を彩るだけでなく、成長が続くため、会話のきっかけをつくりやすい」と小さな観葉植物を勧めた。後日、再び来店した女性は「観葉植物をきっかけに夫婦の会話が増え、今では主人のほうが気に入っている」ともう一つ観葉植物を買って帰ったという。

 接客を通じ、築いた顧客との結び付きは強い。福岡の店舗で意気投合した顧客とは今もメールや手紙をやり取りする。

 「花が大好き。どうしたらもっと良い売り場になるのか考えるのが楽しい」と話す鈴木さん。スポーツ観戦をしていても気がつけば、スタンドを彩る観客の服の色合いをヒントに売り場づくりを考えているほどだ。

(長尾里穂)

[日経MJ2017年9月4日付]

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