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ドラッグイレブンは今や会社を支える孝行息子に(福岡市)

ドラッグイレブンは今や会社を支える孝行息子に(福岡市)

九州旅客鉄道(JR九州)の唐池恒二(からいけ・こうじ)会長の「仕事人秘録」。第9回はM&Aの成功、次期社長の指名について語ります。

――初のM&A(合併・買収)へ大勝負を打った。

「ドラッグイレブンを買いませんか」。営業の立て直しにも一息ついて経営企画部長に戻った2006年。投資ファンドからドラッグストアの買収の誘いがありました。ドラッグイレブンは鹿児島発祥で九州内の店舗数は170。売上高は400億円弱と、傘下に入れるとグループ企業では堂々の1番ですから。のどから手が出るほど欲しかった。

私が交渉人。海千山千の相手にぎりぎりの話し合いが続き、高い買収額でしたが、最後は東京から電話で石原進社長に了承をとりつけました。社内には「経営できる人材はいるのでしょうか」と反対派も。朝・夕の利用客の多いドラッグストアは駅と相性が良い。どうしても買収したかったからね。部下には「良いデータを集めてとにかく説得できる資料にせよ」と資料の作り方まで指示。人材がいなければ最後は私が社長で行くつもりでした。結果的に毎年10億円以上の利益が出る孝行息子に。大勝負でしたよ。

――まさかの通達。

09年4月初旬でした。石原社長から「唐池君、ちょっと部屋に来てよ」。訪ねると「今度の株主総会で社長を引くから」と突然の告白。任期途中であるうえ、2年後に九州新幹線の鹿児島ルートの全線開通を控えており、退任は予想だにせず。かろうじて「そうですか」と声を絞り出しましたが、とどめで「で、君やってくれ」。「えっ!」。心の底からはき出した大声は隣の部屋まで響き渡っていました。

「博多駅にビアレストランを作りたい」。社長就任半年のころ、11年3月3日に開業する新たな博多駅「JR博多シティ」の目玉の相談がありました。採用するビールの銘柄について報告を受けましたが「博多だから福岡のビールがいい」と待ったをかけました。アサヒビールとキリンビールが福岡で生産していました。今までのビアレストランはビール会社1社でしたが、どちらが勝つか対決したらどうだろうか。名前まで決めてやろう。アサヒのA、キリンのKで、「A&Kビア&フードステーション」だ。

1時間ごとにビールの杯数を店頭で報告。従業員もキリン担当が赤、アサヒ担当は青のエプロンを着て担当のビールを勧めると、面白がって注文します。実際、開業すると大盛況で日本の縮図も見えました。キリンがいる三菱グループが大勢で一気に杯数で差をつけると、アサヒと縁が深い住友グループも対抗。博多で三菱対住友の戦いが起きました。業界が活性化して盛り上がる。競争は実に面白い。

JR博多シティは悲願の一つ。JRグループで大きな駅ビルがなかったのは九州だけでしたから。その開業から9日後の3月12日、もう一つの夢が実現します。九州新幹線の全線開通です。ですが、2年かけて準備を万端に整えていよいよという前日、テレビを見て声を失いました。東日本大震災が起きたのです。

[日経産業新聞2016年4月25日付]

仕事人秘録セレクションは金曜更新です。次回は2017年11月3日の予定です。

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