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直感と論理で脳を使い分けるような意識が問題解決に役立つという=PIXTA

直感と論理で脳を使い分けるような意識が問題解決に役立つという=PIXTA

問題
マンホールの形が丸いのは、穴にマンホールの蓋が落ちないためというのは有名な話です。さて同様に、商品特性上、この形が必要という別の商品をご紹介しましょう。コンビニで売られているカップのかき氷ですが、なぜかアイスクリームと違い、容器は円型ではなく縦にぎざぎざの絞りが入っています。かき氷の容器はなぜこのような形をしているのでしょうか?

【ヒント】
 アイスクリームとかき氷の違いはどこにあるのか考えてみましょう。その上で、その違いがあるとなぜ容器の形が違う必要があるのか、論理的に可能性を考えてみましょう。

正解 カップの中でかき氷が回転しないため

アイスクリームのようにもっちりとした食べ物と違って、かき氷の場合は容器が円柱形だと食べているうちに容器の中で氷がぐるぐる回ってしまって食べにくくなるのです。容器がぎざぎざの形をしていれば、角の部分が引っかかって食べている途中に容器の中で氷がぐるぐる回ることがなくなるわけです。

アイスクリームとの違いは「固くて粘り気がない」ことです。だから「ひっかかりを作っておかないと食べにくくなる」というのが論理的に導かれた答なのですね。

「左脳は苦手だ」と言わないで!

前回と今回の問題を楽に通過できた人は非常に左脳が柔らかい人だと思います(前回「ビッグマック、なぜ為替指標に? 論理的思考で謎解き」参照)。一方で大半の普通の人にとっては、論理的に物事を考える作業には、努力と技術が必要です。

経済学と認知心理学を統合した研究でノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン博士は、この論理的な問題解決には技術以上に努力が必要だということを発見しました。

人間の脳は直感的に物事を判断するシステム1と、論理的に物事を熟考するシステム2が存在していて、普段の生活では皆、主にシステム1が作用しながら物事を判断しているのだそうです。そして普段はシステム2の脳はさぼっているのです。

たとえば街で大画面テレビが●●万円で売っているのを見て、「安いから買おう」と思う行動は主にシステム1が直感で処理していて、そのときにはシステム2は脳の中で休んでいるのです。

ここでもしシステム2が働くと、「ちょっと待て。市場の構造自体が変化して、大画面テレビの相場自体が下落し始めているのかもしれない。だとすると過去半年の価格下落の傾向を調べたうえで判断しないと●●万円が底値とは言えないかもしれないぞ」などという論理思考が始まります。

カーネマン博士のたくさんの発見の中で私が特に重要だと思うのは、このシステム2を働かせるために人間の脳は努力をしなければいけないということです。人間の脳は意識しないと難しいことを考え始めるモードには入らないのです。

言い換えると「左脳は苦手だ」と言う前に、大半の人間は「システム2がさぼっている状態では難しいことを考えない」のです。ですから意識して「この問題を問題として考えることにしよう」と口にしてシステム2を叩き起こさなければ、左脳で考えることがスタートできないということです。

メモを用意して論理構造を紙に書きだすという努力をし始めた段階で、システム2が自動的に作動し始めるようなので、ただ本を読んで問題を考える(システム1)のではなく、メモを用意して問題を解く(システム2)ことが、実は大切な技術なのです。

[「日経Bizアカデミー」で2014年5月23日に公開した記事を転載]

「戦略思考トレーニング」は木曜更新です。

鈴木貴博
 百年コンサルティング代表取締役。東京大学工学部物理工学科卒。ボストンコンサルティンググループ、ネットイヤーグループを経て2003年に独立。持ち前の分析力と洞察力を武器に企業間の複雑な競争原理を解明する競争戦略の専門家として活躍。

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