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小鍋に二菜、旬をシンプルに 「一鍋二菜」のすすめ

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NIKKEI STYLE

「ちょっと飲んで帰りたいなあ」そんな気持ちを抱きつつ家路を急いでいた10月はたそがれのとき、向こうから何かが道をやってきた。それは近所に住む友人だった。

「おお久しぶり」

「飲もうか」

「飲もうよ」

二つ返事でそのまま連れ立ち、私の行きつけへと向かうこととなった。

この行きつけ店を贔屓にする理由は数々ある。料理の好みが合う、酒の趣味がいい、適度にほっといてくれる。が、独酌好きにとっては「ほとんどの料理や酒をハーフサイズにしてくれる」ことが、かなり大きな理由だろう。ひとりで行っても刺身、揚げ物、野菜に肉。ビールに日本酒、サワーにワインと好き勝手な夜を過ごせる。

もちろん鍋も、小鍋仕立てである。季節のうまいもんをふたつみっつ、上等なおだしと、香り高いポン酢。ふんわり煮上がったところを「あちち」と頬張り、差しつ差されつゆるゆる飲む。ああ、秋の夜長にこんなにふさわしい光景もあるまい。

鍋というと今までは、大勢で食べるものというイメージがつきものだった。CMなどでも「仲間たちと大勢で囲むあったか鍋」とか「一家団欒、湯気の向こうに家族の笑顔」などの、絵に描いたようなしあわせの光景がセットで付いてきたものだった。

だが今どきの鍋は、もっと少人数で食べる方向へシフトしている。その証拠のひとつが、コンビニの一人鍋だ。レンジで温めるだけで熱々鍋が食べられるとあって、高齢者にも大人気。非常によく売れているという。

また市販の鍋スープの素にも異変が起きている。今まで鍋スープ市場では4~5人前が一般的だったが、数年前に出現した1~2人前の鍋スープの素が大ヒット。今では種類も増え、各社とも新製品を次々と繰り出している。

その背景にはまず世帯の構成人数が減ったことが挙げられる。何しろ今や単身者世帯は全体の34.6%、夫婦や親子などの2人世帯を足すと63.6%にもなる(平成27年の国勢調査による)。鍋のためにいちいち友達を呼ぶのもわずらわしいし、そもそも大きな鍋など持っていないのが当たり前だ。

たとえ家族の人数が多くても「みんなで鍋」はなかなか難しい。塾に行く子どもには先に食べさせなければならないし、もう一人の子どもはバイトでいない。親は残業もあるし、いつも決まった時間に帰ってこれるわけではない。となると家族が揃って鍋を食べるなんてのは、月に一度あるかどうかだったりする。鍋を取り巻く情景は、激変していると言っていい。

そこでオススメしたいのが、鍋のダウンサイジングだ。

鍋のサイズを小さくし、具材はあれもこれもと欲張らず、ふたつ。せいぜいみっつ。そんな「小さな二目鍋」をこの秋から始めてみようではないか。

もともと鍋は「材料を切るだけ、調理と食べるが同時」ということから、秋から冬にかけての手間なし料理として人気だった。が、鍋を小さくし、具材を少なくするだけで、少なかった手間がさらに減る。つまりもっと気軽な料理になるのである。

以前から「鍋をしたいけど材料を揃えるのがめんどくさい」という声は、けっこうあった。実際、数ある鍋レシピを見ても、白菜、春菊、ネギ、シイタケ、ニンジン、肉や魚を時には数種類取り合わせ、貝類、マロニーやうどん、ご飯に卵…。「こんなに買い物しなくちゃいけないの!?」と泣きたくなるほどの量が書かれている。

だが最初から「材料はふたつ」と決めてしまえば、何も面倒なことはない。白菜を切る、肉をパックから出す、以上。そんな感じで気軽に鍋が食べられる。材料をあれこれ取り揃えることに気を使わなくていい分、具材のレベルをちょっといいものにすることもできる。

そして大鍋と違い、小鍋には酒のさかなとしての「小粋さ」がある。

土瓶蒸しのようなもの、と考えるといいかもしれない。だしのうまさ、具の季節感、それを独り占めする喜びは小鍋と共通する。いくら土瓶蒸しがおいしいからといって、大鍋で出されたら興ざめだろう。大鍋で酒を飲むことはできるが、酒肴(しゅこう)ではない。そういうことだ。

ではいくつかオススメの小鍋を紹介していこう。

まず究極の小鍋といえば、湯豆腐に他ならない。豆腐とだし、それだけだ。本音を言えば、だしすら要らないと思う。豆腐が温まり、ゆらりと浮いてきたところをすくい上げる。しょうゆをちろりとかける。あぐ、あぐ、はふ、はふ。ああ、おいしい。

上等な昆布を入れるもよし。高級なおいしい豆腐を奮発するのもよし。だが普及品でも十分に「熱い豆腐のうまさ」にシビレることができる。それが湯豆腐の醍醐味だ。

いくら何でも豆腐だけじゃ色気がない、そう思ったらぜひ入れてほしいのが大根おろしだ。大根おろしが入った鍋は「雪見鍋」という美しい名前になる。白い豆腐に、白い大根おろしのいさぎよさ。一味唐辛子をパラリとかければ、白と赤のコントラストがまた格別だ。

豆腐に変えて鱈(たら)を加えるのもイナセである。ほら、名前の漢字に「雪」がついている。みぞれ混じりの雪の夜、雪の字のついた魚の雪見鍋をつつきながら、雪椿など雪の名がついた酒を飲む……なんてちょっとかっこよすぎだろうか。

雪を汚してもいいのなら、もうひとつ日本酒のアテを。大根おろしがふつふつと煮えてきたところに、イカの塩辛を乗せるのだ。熱いおろしに、半煮えの塩辛。これはたまらない。

缶詰使用、でもジャンクと言わせない迫力の小鍋は「鮭缶とジャガイモ」。ジャガイモに火が通ったところへ鮭缶を丸ごと入れ、仕上げにバター。これは黒胡椒がめちゃくちゃ合う。

切ってある刺身を買ってくればすぐできるのが、魚のしゃぶしゃぶ。タイでもヒラメでもカワハギでも何でもこい。もちろん「てっさ」を選べば、ふぐしゃぶだってできてしまう。合わせるものはクセのないスプラウトか、もしくは思い切り主張する春菊もいい。おいしいポン酢があれば、至福の時が過ごせるだろう。

「鶏つくねと青ネギ」も大好きな組み合わせだ。鶏肉から出るうまみと脂をじんわりまとった青ネギがピカピカと美しく、またおいしいこと。七味が基本だが、鮭缶同様これもバターと黒胡椒が合う。お試しあれ。

「レタスと豚バラ」も素晴らしい。サラダとは違うしんなりレタスの食感に、病みつきになること間違いなし。粋でイナセな小鍋のはずが、レタス1玉くらいペロリと食べられてしまう。こちらは柚子胡椒か、かんずりで。

学生が作るズボラ飯みたい、と言わず作ってほしいのが「キムチとチーズ」。チーズが溶けたらすぐ食べられる素早さも魅力的。シメはうどんかご飯か大いに悩むところまでが、この鍋の真骨頂だ。

料理家の土井善晴先生は「ごはんは一汁一菜でよろしい」と提唱している。毎日張り切ることはない。日常の食事は一汁一菜で十分だという考え方は、多くの作り手の肩の荷をおろしてくれた。

鍋も同じだ。手の込んだ鍋はお店で食べるか、たまのことでいい。普段は「一鍋二菜」小さな二目鍋でいいのだ。大勢で囲む大鍋とは違うしあわせが、そこにはある。

まだ先の話だが、春の足音が聞こえてきたらぜひ「菜の花とハマグリ」の鍋を食べてほしい。実は私を小さな二目鍋の世界に引きずり込んだのは、この小鍋だった。たったふたつで完成されている。シンプルだけど味わい深い。何も足す必要がない、完璧な小鍋だ。この小鍋を食べて、二目小鍋の沼にハマってくれたら本望だ。

(食ライター じろまるいずみ)

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