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質問ばかりを浴びせると、かえって黙り込んでしまいかねない PIXTA

質問ばかりを浴びせると、かえって黙り込んでしまいかねない PIXTA

寡黙な人とコミュニケーションを図るのは難しいものです。どんな話を切り出せば興味を持ってくれるのかをつかみにくいからです。なかには「話しかけないでほしい」というようなムードを漂わせている人もいて、困ってしまいますね。

そんな人を前にして、ついやってしまうのが「質問攻め」です。「沈黙が怖い」「何も話をしてくれないのは、自分が嫌われているからではないか?」といった不安に駆られ、思わず質問攻めにしてしまうのは無理もないことといえます。

先に本連載で紹介した、話題に詰まったときの切り札である「きにかけていました」を頼りに質問するのは、会話のきっかけづくりには好ましいのですが、「一問一答」のように、会話がぶつ切りになりやすい点は注意が必要です。話に広がりが生まれないと焦り、脈絡のない話題を次々に振ってしまうのは、逆効果になりかねません。

質問ばかり繰り返していると、相手に不信感を与え、余計に口を開いてもらえなくなってしまう可能性が大です。誰しも、親しくない人からあれこれ質問されたら、落ち着かない気持ちになるでしょう。

ゆっくりゆったりの会話ペースで波に乗せる

誤解されがちな点ですが、寡黙な人は話すことが嫌いなわけではなく、自分の気持ちを表現するのが苦手で黙りこんでしまったり、人見知りでなかなか打ち解けられなかったりしているだけです。本当に物静かな人もいますが、「寡黙=人間嫌い、話嫌い」は勝手な思い込みでしょう。多くの人は相手の話はきちんと聞いています。当然、自分の考えも持っているのです。

だから、ゆっくりゆったりしたペースで話をしながら、相手が心を開くのを待つという姿勢が重要です。世の中は「打てば響く」というタイプの人ばかりではありません。話好きな人や社交的な人は、ここを見誤りがちです。しゃべり上手な自分を基準に考えてしまうからです。

自分は話題が豊富で会話力に自信があるせいで、自分が会話の主導権を握れば「盛り上がる」「うける」と思っている節があります。そんな思い込みもあってか、あまり反応しない「寡黙な人」を見つけると、「こんなはずではない」と、首をかしげ、「おとなしいですね」「いつもこうなんですか?」などと愚痴っぽい言葉を発してしまう人もいます。でも、こういう「上から」の態度は禁物です。寡黙な人は人見知りや話下手、恥ずかしがりやなど、自分のキャラクターや傾向をコンプレックスに感じている場合が少なくありませんから、気分を害してしまいます。その結果、ますます黙り込んでしまいかねません。

糸口を丁寧に探せば、話を引き出しやすくなる PIXTA

糸口を丁寧に探せば、話を引き出しやすくなる PIXTA

相手が寡黙な場合は、無難な話題(先に紹介した「きにかけていました」など)をまず一つだけ振ってみて、反応を探ってみるのがおすすめです。そこに乗ってこなければ、その話題は好みではないととらえ、深追いを避けて、別の話題に変えるというスタンスです。いくつか異なる角度から水を向けたうえで、少しでも相手が乗ってきた話題が見つかれば、そのまま話を続けていけばいいのです。そうこうするうちに、相手が興味を持つポイントが分かり、会話を引き出せるようになります。根気強く糸口を探るという態度が肝心です。

相手の得意フィールドを探り当てる

たいていの人は「話したい心」を持っているものです(もちろん、例外はあります)。話下手や人見知りの人の多くも、本当は自分の話を聞いてもらいたいと思う「話したい心」を持っています。ただ、気持ちをどう伝えたらいいかが分からなかったり、会話に入り込むタイミングがつかめなかったりしているだけなのです。

だから、寡黙な人を相手に「質問攻め」や「早口でまくし立てる」「切れ間なく話し続ける」などは、相手に会話をする機会を失わせるだけですから、慎むようにしましょう。お互いに盛り上がれそうな話題が見つかったら、「私は詳しくないのですが、興味があるので教えてくれませんか?」と、相手が話しやすいように尋ねてみるといいでしょう。誰しも自分が得意で、相手は自分ほどには強くない事柄ならば、ちょっとした優越感を抱きながら、気持ちよく会話ができるものです。

「よくご存じですね」「さすがです」「興味深いですね」などと、称賛や共感を示しながら、会話をつなげていきましょう。どんなに寡黙な人でも、いったん心を開けば冗舌に話をしてくれるものです。むやみに焦らず、そのタイミングを待つという姿勢も忘れないでくださいね。

次回は、相手の「間違い発言」をさりげなく伝える法です。お楽しみに!

「臼井流最高の話し方」水曜更新です。次回は10月25日の予定です。

臼井由妃
ビジネス作家、エッセイスト、講演家、経営者。熱海市観光宣伝大使としても活動中。著作は60冊を超える。最新刊は「今日からできる最高の話し方」(PHP文庫)
公式サイト http://www.usuiyuki.com/

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