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「AIと共存する力」を養う3つの学問とは? 第2回 駒澤大学経済学部准教授の井上智洋氏に聞く

2017/10/13

日経ビジネススクール(日本経済新聞社、日経BP社)では、新事業や経営を担う次世代リーダー向けに、テクノロジーが引き起こす社会や産業の大変革を予測し、それを乗り切る羅針盤となる戦略を伝授する「テクノロジーインパクト2030」を10月11日に開講します。本連載では「テクノロジーインパクト2030」の講師に、各研究分野でのテクノロジーの進歩が近い将来に何を起こそうとしているのか、ビジネスにどのようなインパクトを与えると考えているのかを聞きます。第2回は駒澤大学経済学部准教授の井上智洋氏です。

「私は根っからの文系だから、技術のことはさっぱり」。こう言ってはばからない経営者やビジネスパーソンは多いのではないか。技術の動きなど知らなくても、自分たちはもっと価値の高い仕事ができるという自信からの言葉だろう。しかし、そんなことを言っていられる時代は過ぎ去った。もはや人工知能(AI)など技術革新のインパクトが及ばない業界は存在しない。

AIやロボットなどが発達し、人間にしかできなかった高度な作業が自動化され、生産力を飛躍的に向上できるようになった。そのインパクトは、多くの人が考えているよりはるかに大きい。経済活動の基盤となる生産構造が根本から覆される可能性が出てきている。これまでの生産構造では、機械(資本)と労働を投入し、成果物として工業製品やサービスを生み出していた。そして、生産力を高める際には、機械と労働をセットで増やす必要があった。ところが、AIやロボットの発達によって、機械の投入量を増やすだけで生産力を高められるようになった。

新しい価値を持つ機器やサービスを生み出すため、技術者が先端技術のインパクトに関心を寄せるのは当然。しかし今や、マクロ経済を専門とする経済学者も技術革新が経済活動に及ぼす影響について真剣に論じるようになった。

例えば、これまで経済学者は雇用環境の変化を論じる際、技術の発展が及ぼす影響を考慮することはほとんどなかった。たとえ、布地を織る仕事が自動化して機織職人が職を失っても、別の仕事がその労働力を吸収すると考えていたからだ。ところが、あらゆる作業に適用できる汎用性の高い自動化機械の登場が視野に入り、労働者が行き場を失う事態が現実味を帯びてきた。雇用喪失が常態化すれば、生産した工業製品やサービスを購入する人が消え去る。

AIが未来の経済に与える影響を研究する駒澤大学 経済学部 准教授の井上智洋氏に、AI時代の経済や社会活動の形、さらにはこれからの時代を生き抜くため企業や私たち自身が身に付けるべきスキルなどについて聞いた。

■雇用なき経済成長の時代へ

――人間にしかできなかった仕事をAIが担えるようになりました。AI活用の拡大は、経済にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

AIの活用範囲が広がると、実質国内総生産(GDP)をベースにした経済成長が加速すると考えています。ただし、実質GDPが増えても、誰もがあまねく豊かになるわけではありません。現実には、所得の格差が拡大することでしょう。

AI時代の経済成長を、私は「雇用なき経済成長」と呼んでいます。これまでの常識では、経済成長と雇用創出はセットでした。しかしAI時代には、経済成長しているのに、雇用が生まれない状態になります。その一方で、AIに負けない能力を持つ人、AIを使いこなして成果を上げる人、こうしたスーパースターのような労働者も出現することでしょう。また、AIやロボットが働く無人工場を所有する資本家も大きな利益を得ます。所得の格差が拡大するのは、このためです。

――雇用がなくなると、多くの人が製品やサービスを購入できなくなります。生産者が利益を得ようにも、買う人がいないのではビジネスが成立しません。

その通りです。所得格差を放置したままAIの導入を進めれば、職を失った労働者は買いたい物があっても変えません。一方お金持ちは、お金はあっても買いたい物がなくなり、消費は飽和していきます。その結果、消費需要が不足して、放っておくと経済が縮んでしまう可能性があります。

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